ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の研究のお仕事15

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私は、研究が好きだ。
いくつものパターンが、頭に次から次へと降りてくる。
それを次から次にこなして、結果を結びつけ、たった一つの光の点、完成品を目指す。

研究は、料理に似ている。
いくつもの素材、調味料、火加減、混ぜる順序、加熱のタイミング、全てが調和して、最高のごちそうが出来る。

芸術作品だ。

新商品に携わる前、私は、谷さん(つまり、かすみさんの恋人)の分析の仕事を、代わってしていた。
工場で作られる製品の有効性分のチェックだ。

そのうちの蚊取り線香の有効成分を、谷さんに教わったとおりに、ガスクロマトグラフィで分析していたが、バラツキが大きく、基準値に達しないことも多々ある。

これは、ガスクロにいく前の実験方法に問題があると思った私は、田島部長に試験結果と問題点を示して、相談してみた。

田島部長は、
「よく、教えてくれました。後のことは、私に任せてください。この分析は、やつに戻して、やり直させますからな。これからも、気付いたことがありましたら、バンバン言ってきてくださいよ。」と、嬉しそうに言ってくれた。

私は、田島部長に認めてもらえて嬉しかったし、少しでも役にたてて良かったと、心から、ほっとした。

その後、田島部長は、谷さんを呼んで、「谷くん、これは、いったいどういうことですかな?」と、叱りつけているのが、遠くから聞こえた。

思えば、かすみさんは、この後、私への風当たりが、さらに強くなったような気がする。

しかし、研究が楽しくて没頭している私は、鈍感で気付かない。
もともと鈍感なのに更に拍車がかかる。

幸運なことに、谷さんを始め、かすみさん以外の研究室のメンバーは、私に協力的で優しかった。
喜んで助言や手助けをしてくれた。

叱られた谷さんでさえ、気にせずに、私には優しく、助けてくれた。
谷さんは、この頃、三国志のゲームにはまっていたが、

「君に三国志をやらせたら、どう闘うんだろうね。どんな策士になるんだろうな。」と、楽しそうに笑いながら言っていた。

思えば、これも、かすみさんには、気に入らなかったのかもしれない。

新商品開発は、簡単なものから始めてくれた。
観葉植物にスプレーして葉にテカリを与え、更に植物を保護するタイプの商品。

液体肥料を従来の青色から緑色にしたもの、これは、某メーカーの依頼品だ。

頭に浮かぶいくつもの試作品を次々、作成し、耐久テスト等、経過観察をしていく。
出来ても、経過をクリアしなければ、意味がないからだ。

頭に次々にアイデアが浮かぶ。
私は、楽しくそれに従う。

田島部長が、
「花田さん、少し、休憩しては、どうですかな?」と、心配するくらいだ。

簡単な商品開発に成功した私は、次から次に新商品開発を任されるようになる。

家では、お父さんは、そんな状態の娘が嬉しくてたまらない。
自分の会社で、部下に娘自慢をする有り様だ。

「お父さん、社内秘密なんだから、あんまり、言っちゃダメなんだよ。」と、私が、少し注意すると、

「だって、嬉しいんだから仕方ないだろう。自慢したくて、仕方ないんだ。」と、満面の笑顔で答える。

困ったもんだと、私は苦笑いする。

お父さんは、部下たちに猫自慢もしている。ミュウとライサー、シルバーが可愛くて仕方ない。

お父さんの部下たちは、毎日、自慢話に付き合わされて大変だ...

私は、研究の仕事の本格的な始まりに、毎日が薔薇色だった。
家に帰れば、ミュウ、ライサー、シルバーがいて、更に優しいお父さん、お母さんもいる。

幸せで充実した楽しい日々だ。

本社から、開発部の田端部長がたまに、やってくる。
田端部長は、新しい試薬を調達したり、話題の商品を提案してくれる。

田端部長は、かすみさんを縁故入社した人だが、私には、とても優しかった。
私のことを、よく理解してくれて、興味を持つものを提案してくれていた。
それに、とても優しかった。
あとで聞いた話だが、田端部長は、小さいころから、いろいろ苦労されていた。

研究会議には、田端部長と一緒に、デザイン部門の南方さんもやってくる。
南方さんは、商品のデザインを担当している。パッケージの絵や構成、デザイン全般を任されている。

南方さんは、天然パーマだ。
バカボンの漫画に出てくるラーメン好き好き♪の小池さんみたいな髪型だ。

真美ちゃんと、私は、爆発頭と、陰で呼んでいた。
別に悪意は、全く無い。

爆発頭は、紳士的で気さくな人で、話しやすい。
デザイナーなので、感性が独特で、話していても楽しい。
爆発頭は、私の服の選び方や好みも、個性的で気に入っているようだった。

会議で、営業からの依頼で、某メーカーの液体肥料に、マグネシウムを入れたものを至急作って欲しいと田端部長から、田島部長に命令があった。

もう、売り出し日が決まっているらしく、全く日にちが無い。

田島部長は、私に、その仕事を任せた。

今までの歴代の液体肥料の処方を、私に渡しながら、細かく説明する。

「よいですかな。たった僅かのマグネシウムを入れるだけだと思うかもしれまんが、大変なんですよ。入れる順番、混ぜ方、加熱の温度やタイミング。本当に微妙なんですよ。今まで前例もないですしな。しかも、製品レベル、工場で大量生産出来る処方までの完成ですぞ。」

田島部長は、内心、私にあまり、無理をさせたくないと思っているようだった。

しかし、若くて舞い上がっている私に、恐いものは無かった。

「任せてください。作ってみせます。」と、満面の笑顔で答える。

ふ~と、田島部長は、一息ついて、化学的な理論の説明を始める。





🐈続く🐈