ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の猫~ミルとの出会い5~

↑カテゴリー別のタイトルで、編集しました。【輝とミルのこと】をクリックすると、ミルの物語だけが、出ます。🐈





やんちゃ盛りのミル

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「じゃあ、お母さん。私、仕事終わったら、すぐに帰ってくるから、すぐ、ミルを乗せれるようにスタンバイしといてね。じゃあ、ミル、行ってくるね。」と、ミルの頭を優しく撫でて、会社に出かける。

ミルは、吐くのが少なくなったといっても、一刻を争うのには変わりない。

会社で、仕事していても、心配でたまらない。

{こんなことしてる間に、手遅れになるんじゃ?いや、しかし、働いて金を稼いで、最高の治療を...}と悶々していたら、西山所長が、

「なんや、花ちゃん、難しい顔して。何かあったんか?」と呑気に尋ねる。

私は、どうも、すぐに顔に出るらしい。

西山所長に、今までの経緯とミルのことを、説明すると、

「猫、拾ったんか。そうか、猫にお金かけるなんて、物好きやな。」と、悪意なく本気で言う。

一瞬、殺意を覚える...

{こいつは、いいヤツなんだが、こういうところがある。全く、価値観が異なるっていうか、永遠に理解しあえないだろう。}

その時、山さんが、ちょうど現れる。

山さんは、私のオーラを察して
「なんや、花ちゃん。なんか、ムカつくことでもあったんか?」と聞く。

所長が、「死にかけの猫、拾ったらしくて、病院通いして、大金はたいてるらしいわ。」と、鈍感に答える。

更に、殺意を覚える...

山さんが、全てを察して、
「大したもんやないか。なかなか出来へんことや。そりゃあ、心配なことやな。西山ちゃんは、そういうの、全然分からんからなあ。」と、私を宥める。

「そうかぁ?猫にそんな金、使うかなあ。」と、不思議そうに言って、更に油に火を注ぐ。

山さんが、私の方を見て、怯えて、
「まあ、花ちゃん。元気になったらええなぁ。今日は、急ぎの用がないから、帰るわな。」と急いで逃げる。


仕事中、ずっとムカつく。

{いつか、所長が、怪我かなんかになって、ちょっと痛い目にあえばいいのに。そうしたら、ちょっとは、気持ちが分かるだろう。}と思ってしまう。

思いは通じる。後に、私も後悔する。

何年か後、所長は、家のベランダで、すべって転んで頭を打ち、頭に大きなたんこぶを作り、右足に全治2ヶ月の骨折をする。

私は、その間、一番の多忙期に1人で営業所を回さなければならないことになる。

気を付けなければならない.....


会社を定時に終わらせて、急いで家に向かう。

急に、我に返って、ミルのことで、頭がいっぱいになる。

{アホな所長に、関わっている場合じゃなかったわ。}と反省する。

家に着いて、急いでミルをキャリーバッグに入れて、スタンバイ済みのお母さんと、病院に向かう。

行く途中、お母さんに、ミルの様子を聞くと、やはり、吐くのは治っていないようだ。

7時半に着いて、受付をする。
山崎さんが、ミルの様子をいろいろ聞いてくれて、詳しく書いてくれる。

「大丈夫ですよ。しばらく、お待ちくださいね。」と安心させるように、言ってくれる。

山崎さんは、親切で優しい。

待合室で、待っていると、気分の悪そうな柴犬が、急に吐いた。

山崎さんが、すぐに飛んできて、吐いたものを処理して、飼い主さんを宥めながら、柴犬のケアをする。

{プロだなあ。}と関心していると、

「花田さん」と、診察室から呼ばれたので、急いで、キャリーバッグを抱えて、お母さんと向かう。

「失礼します。」と入ると、今日は、院長先生だ。

院長先生は、やはり、30代後半くらいで、白衣の下に、黄緑色のポロシャツを着ている。
気さくで優しそうな人だ。

ただ、右腕に猫に引っ掛かれた生々しい大きい傷が残っている。

今日も、お母さんと2人がかりで、ミルをキャリーバッグから、なんとか出して、診察台の上に置く。

体重を計ると、660gだ。
たったの10gしか増えていない。

院長先生が、カルテと、さっき山崎さんが書いた問診票を、じっくり見ながら、「吐くのは、おさまりませんか?」と聞くので、

「少し回数は、減りましたが、やっぱり吐きます。」と答える。

「藤堂先生が、前に殺菌効果のある抗生物質を出してくれているし、注射もしてくれているので、効果は出ていると思います。」と説明して、

「藤堂先生は、胃腸に何か詰まっている可能性もあると言っていますが、それも一つ考えられます。」少し考えて、

「あとは、猫汎白血球減少症の可能性です。他に猫は飼っていませんか?もし、いたら、隔離しないと感染してしまいます。」と言う。

「その子しかいないので、大丈夫です。その場合の治療は?」と聞く。

「血液検査と便検査で、調べますが、その場合は、抗生物質で、下痢や嘔吐がおさまるまで待つしかありません。輸血が、必要になる場合もあります。」
と、悲しそうに言う。

{いや、それは、もう死の宣告と同じだろう。もう待つ時間なんか、少しも残っていない。}

「じゃあ、胃腸に何か詰まっている場合の治療は?」と、気を取り直して聞くと、

「まず、レントゲンで見ます。しかし、開けてみないと分からない場合 もありますので、手術になります。ただ、手術するには、この子は、やせ過ぎています。骨と皮の間に、ある程度の脂肪がなければ、手術は、危険なものになります。勿論、する場合は、全力でしますが... 」と言う。

{いや、手術しないなら、死んじゃうし。手術も、かなりのリスクが...}



三人で、しばし、絶句する。






🐈続く🐈