ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の猫~ミルの成長~

おばあちゃんちに行ったときのミル

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吐かないようになって、これで一安心と思ったのも束の間、問題続出だった。

幼い頃、餓えた経験は、なかなか消えないようだ。ご飯をちゃんとあげるのに、なかなか安心出来ないようだ。

{今、食べれるものを見つけたら食べなければ!今度は、いつ食べれるか分からない。}

彼女の本能にインプットされているらしい。

バタバタ走って何か捕まえて食べようとしている。

ゴキブリだ!

{や~め~て~。また、虫が胃に入っ
ちゃう。}

夜中にミルが、台所や廊下で、バタついていた原因が分かった。
ミルは、常に何かをハンターしていたのだ。

お母さんが、ご飯を食べるときも大変だ。ミルは、いつも狙っている。
そして、掴んだ獲物は、なかなか放さない。ミルは、命懸けなのだ。

お母さんは、部屋のドアを締め切って、こっそり食べなければならない。
しかし、ミルはドアに待ち構えていて、隙あらば捕っていく。
ミルは、必死なのだ。

トイレのしつけも、なかなか上手くいかない。
ミルは、どうも先輩猫の寝床のタオルの上にするものと、間違えて覚えてしまったようだ。
お母さんは、完璧に失敗した。

「もう、ミル!永遠に部屋に入れないわよ!」と、怒り出してきた。

しかし、私も堪忍袋の緒が切れた。

「お母さん。それだったら、もう、ミルは私の部屋にトイレと一緒に入れる。ずっと、このミシンの上は、許さない。」と静かにお母さんを見て言う。

私は、怒るとかなり効果があるらしい。別に怒鳴ったり、大声で怒ったりせず、静かに言うだけなのだが. ..

会社でも、静かに電話で話そうとするだけで、電話の相手が飛び上がる。
「はい!ただいま、代わりますので、どうかお待ちください!!」

何故、怯えているのか分からない。
丁寧な口調で、静かに怒りを抑えるように話しているだけなのに。


お母さんは、それから更に必死に教えるようになった。
「砂にするのよ。布は違うの。砂よ。」

上手くいくと、
「そうよ、ミル。偉いわ。いい子ね。偉いわ。そう、砂をかけるのよ。偉いわ。」と誉めまくる。

ミルは、誉めると伸びるタイプだったようだ。

トイレが、完璧に出来るようになった。
ただ、頻繁にトイレに行って、誉めてとねだるようになった。

{いや、そんなに何回もトイレ行っても、何も出ないでしょう。}

{まあ、ミルとお母さんが、楽しそうだから、いっか。}と、私も一緒になって誉める。

ご飯も、いつももらえることを理解して安心したらしく、ちょっとずつ、ゆっくりと、1日六回に分けて食べるようになった。

本で調べても、1日の回数が多いような気がするのだが、胃が悪かったし、何より食べてくれるのが嬉しくて、{まあ。いっか。}となってしまった。

9月に入る前に、
「さあ、ミル。解禁よ。お部屋を自由に使っていいわ。」と、お母さんが、嬉しそうに宣言する。


しかし、このあと、また別の問題が発覚する。

ミルは、広々とした部屋を使えない。
恐くて、常に隠れていたいのだ。

二階の部屋でも、本棚の奥や、プリンターの台の下、とにかく隅のすぐに身を隠せる場所にしか、居れない。

カラスが鳴くだけで隠れる。家の前に車が止まるだけで、隠れる。
犬の散歩が来るだけで、隠れる。
人間の声が、外で聞こえようものなら最悪だ。隠れて、何時間も潜んで出てこない。

ミルは、ほんの手のひらに乗るような小さい頃に、一人で昼も夜も、外で生き延びようと格闘していたのだ。
蛙を捕まえて餓えをしのぎ、暗い夜を怯えながら隠れて眠り、昼は、カラスや外敵から噛みながら身を守って。

その恐怖は、なかなか忘れられるものでは、ないようだ。

{かわいそうに。}
余りに不憫で泣きそうになる。

徐々に安心させようと私は、いろいろと工夫する。

家にいられるときは、傍にいて、「大丈夫だよ。ほら、傍にいるよ。出ておいで。」と、ずっと一緒に寝ころんで話しかける。

鳥が鳴いてたら、「大丈夫だよ。ほら、鳥さんだよ。」と窓際に置いて、
「ほら、ガラスだから、誰も入ってこれないよ。安心して外を見られるよ。」
と、窓から一緒に外を見た。

時間をかけて、何日も何日も、ミルが安心出来るように繰り返した。

あるときから急に、ミルは、自分から窓際に座って、雀と話すように鳴くようになった。

毎日、毎日、雀と長い時間、話すように鳴く。雀も、ミルに話すように鳴く。

{雀の友達でも出来たのかな?
ミルは、鳥語が出来るのかな?}

不思議だったが、それ以来、ミルは、窓から外を見るのが好きになった。

私は、自分の部屋の窓際にある小さいタンスの上のアクセサリーや飾りを全部取って、座布団にタオルを敷いて、ミルの寝床を作った。

ミルは、そこから窓の外を見て、くつろぎ、鳥と話し、眠るようになった。

体力がついたミルを運動させようと、いろんな猫のオモチャを買って遊んだ。
ミルは、自分のために、オモチャを買ってきたのが、すぐに分かるらしく、帰ると、すぐに、オモチャの入った袋に頭を突っ込んで、嬉しそうに、{遊ぼう!}とねだる。

オモチャに夢中になって遊んで走りまくるので、隠れることが無くなった。
ミルの二の腕と太ももも、筋肉がついて、たくましくなった。

ただ、私とお母さん以外に懐かない。
誰が来ても、カーテンの奥の自分が取られない場所に潜って、帰るまで潜んで出てこない。

外で、車が停まると、ウ~と唸って、二階に駆け上がって、すぐに隠れてしまう。

大阪のおばあちゃんちに連れて行っても同じで、カーテンの奥に隠れて、帰るときまで、出てこない。
だから、誰もミルの姿を見ることは出来ない。見れても一瞬だ。

この人見知りは、全然直らない。
ミルにとって、人間は、絶対的に恐いものなのだ。

噛み癖も、なかなか直らない。
私には、噛まないが、お母さんには、気に入らないことがあると、追いかけて噛みにいく。

お母さんが、「このカミカミ!悪猫め。カミカミさん。カミカミさん。」と、よく文句を言っている。

確かに、噛まれたあとをみると傷になっているし、血がでていることもある。加減が出来ないらしい。

私の見ていないところで噛むので、私が怒ることも出来ない。
お母さんも噛まれたら怒るらしいのだか、さらに噛みにくるらしい。

噛み癖も、直らない。

せめて、他の誰かに懐いてほしい。
懐くまでいかなくても、逃げないでほしい。どうしたら、よいものか?

悩みは、尽きない。


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