ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の猫~ココの登場1~

↑カテゴリー別のタイトル編集しました。【輝とココのこと】を、クリックしたら、ココの物語だけが出ます。🐈



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ミルも、この家での生活に慣れて、すっかり落ち着いてきた。

冬になって寒くなると、コタツも覚えたし、夜、眠るときは、私の布団に潜って、一緒に眠るようにもなった。

ミルとお母さんは、すっかり仲良しで、お母さんは、ミルにメロメロだ。

たまに、ミルは、お母さんを追いかけて、足を噛んでいる。
お母さんが、「痛い!痛い!痛い!」と、叫びながら逃げている。
どうも、ミルは、お母さんが、喜んで、はしゃいでいると勘違いしているようだ。

それでも、お母さんは、「カミカミの悪猫め。」と言うだけで、怒らない。

本当に2人は、仲良しだ。

穏やかに月日が流れていく。

途中、ミルが、お母さんが裏の扉を開けた隙に、外に飛び出してお母さんが、必死に泣きそうになりながら、「ミル~ ミル~」と家の回りを探していて、私が家で待機していたら、出た裏口から戻って来て、私の横に座ったミルが、窓の外のお母さんを見て、{あの人、どうしたの?}と言っている事件や、正月用に買った鯛の尾頭付きの塩焼きを飾っていたら、ミルが、鯛を箱から引っ張りだして、食い散らかして逃げていった事件のような軽いことは、多々あったが、平穏だった。

春になって、会社の健康診断の時期がやってきた。いつも、市内の大病院の人間ドックを受けている。

憂鬱だ...いつも、何か引っ掛かる。

会社に結果が郵送で送られてきて、ドキドキしながら、見る。

{お願い!今回は、見逃して!}

いつも引っ掛かる胃と心電図は、経過観察だ。良かった。
内診のときに、若い男の先生に、
「心雑音が、ありますけど。」と言われたけれど、

「あ~。たまに有るんですよね~。でも、いつも結局、何もないから見逃してくんない?」と、お願いしてみたら、

「仕方ないですね。でも、何かあったら、すぐに自分で病院で調べてくださいよ。」と、見逃してくれた。

お願いは、してみるものだ。

血液検査もギリギリセーフ。経過観察で済んでいる。いい感じ。

{はっ!..オーマイゴッド....}

ダメだ。今回は、大腸検査で、引っ掛かった。要精密検査だ...
去年は、大腸は、引っ掛かからなかったのに...

私は、がっくりして、後ろの席の西山所長に、しょんぼりした声で
「所長、ダメでした。また、今回も二次検査です。」と報告する。

所長が、「おっ、なんや。また白血球か?」と、とぼけた声で聞く。

去年は、血液検査で、白血球で引っ掛かった。
二次検査で、初めて聞く血液内科という科にかかった。
担当医は、30代の女医の和田先生だった。

再度、血液検査で詳しく調べられた。
さすが大病院。検査結果が、3時間で分かる。

鉄分が、異常に少なくなっていたので、和田先生が、とりあえず鉄剤を出してくれたが、どうも、白血病を疑っているようだった。

採血室でも、看護師さんが、異様に優しい。というか、質問が変だ。

「消毒で、かぶれることはないですか?おさえる綿は、普通ので大丈夫ですか?血が止まらないことは、ないですか?」

私は、「大丈夫です。」と不審そうに答える。

「じゃあ、採血を始めますね。途中で気分が悪くなったら、すぐに言ってくださいね。すぐ、止めますからね。」

{両隣のおじいさん、おばあさんは、何も言われずに、普通に採血されてるんですけど...}

「はい、終わりました。立てますか?次は、点滴に行かれる予定ですか?」

{え?点滴?私、何の病気なの?}

しばらくの間、私自身も、先の始末の心配を考え始めてしまった。

和田先生の治療方針で、鉄剤を一日に200mg飲んで、一週間後に採血して、血液検査をすることが、二回続いた。

和田先生は、「飲んで気分が、悪くなったら言ってくださいね。注射か点滴に変えますからね。」と心配してくれたけれど、私は、大丈夫だった。

そうこうしている内に、私が白血病かもしれないという噂が流れて、心配した小山部長が、本社から、わざわざ美味しいお菓子の詰め合わせを持って、営業所にやってきた。

小山部長は、小柄で、身長が低いけれど、なかなかビッグな伝説を数々、残してきている。

会社のバーベキューで、最後に、焚き火に、残ったガソリンをポンと放りこんで、後ろに吹っ飛んだけど、メガネだけが割れて無事だった漫画みたいな事件。

社員旅行で、呑んだくれて、危うく飛行機に乗り損ねそうになったところを、JALの人、2人に両脇に抱えられて飛行機に運ばれてきた事件などなどだ。

小山部長は、心配して私にお菓子を手渡しながら、
「花ちゃ~ん、大丈夫なん?しんどかったり、何かあったら、治療に専念して大丈夫やから。無理せんと言うてな。ちゃんとフォローするから、安心してええで。何も心配せんで、ええんやからな。」と、元気づけてくれる。

「ありがとうございます。」と、お礼を言って、お菓子を受けとる。

小山部長は、いつも優しい。

{しかし、いつの間に、こんな大層なことに..西山所長、勝手に適当に言いふらしやがったな。}


結局は、二回目の血液検査で、ただの鉄分不足の貧血だったことが、分かったのだ。

和田先生は、「心配したけど、本当に良かったです。」と、喜んでくれた。

そんなことを思い出しながら、西山所長に、「いえ、血液は正常です。」と、キッパリ答えて、二次検査の予約を電話して入れる。

5月13日の午後2時に予約を入れた。

その日は、午前中に仕事をして、お昼ごはんを食べてから、病院に行った。

もう、二回目だから、手順は、分かっている。どうせ、今日は、問診して、内視鏡検査の予約を入れるだけだ。

消化器内科の大きな待合室で待つ。
大病院なので、2時に予約していても、一時間遅れは当たり前だ。
本を読みながら、のんびり待つ。

3時過ぎに、突然、私の携帯が鳴る。
{こんな時間に誰からだろう?}
不思議に思って携帯を見ると、お母さんからだった。

急いで携帯のエリアに移って、電話に出る。

「もしもし、どうしたの?」と、
私が聞くと

「あ、お姉ちゃん。今、田山病院にいるんだけど、先生に、話があるので、家族の人を呼んでほしいって言われているのよ。」と困ったように答える。

田山病院は、家の近くの公立病院だ。

「田山病院?今日は、いつもの近所の沼田循環器内科に行ってたんじゃなかったっけ?」と驚いて聞く。

お母さんは、高血圧と不整脈の薬をもらいに、この病院に通っている。

「それが、昨日、一日中、家でホルター心電図を付けて調べてたでしょう。その結果をみて、沼田先生が紹介状書くからすぐに行って、田山病院の浅井先生に診てもらいなさいって...」

「沼田先生、救急車呼びそうになってたんだけど断って、家に帰ってから、タクシーで自分で行ったのよ。」と、ちょっと自慢気に説明する。

「今日は、無理だって言ったんだけど、浅井先生が7時まで待てるから、今日、来てもらってくれって聞かないのよ。」と、困って続ける。

{沼田先生が、救急車で行かせようとしているし、浅井先生が今日中と言っているんだから、かなり緊急事態のようだ。私のほうは、辞めて向かったほうがいいんじゃ...}と思ったそのときに、ちょうど呼ばれた。

「今から診察だから、多分5時までには、行けますって浅井先生に言っといて。」と慌てて言う。

お母さんが、「分かった。」と言って、電話を切る。



平穏な日々は、なかなか続かないものだ。



🐈続く🐈