輝の猫~ココの登場13~
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お澄ましのココ
土曜日の朝、目覚ましで5時半に起きる。
今日は、[決戦の日だ」と、気合いを入れる。横で、ミルも、「アイ!」と鳴いて、一緒に気合いを入れてくれる。
いつものように、ミシン台の上の窓を開けて、ミルに了解を得てから、彼女のところに行く。
カリカリをあげながら、
「今日は、土曜日だから、早めに四時くらいに来てくれないかな。ちょっと、一緒に行きたい所があるんだ。」と、お願いしてみる。
{無理かな..だいたい、無理やり押し込んで連れて行ったりしたら、もう、来なくなっちゃうんじゃないかな...もし来ても、もう一回、病院に連れていけるんだろうか..前途多難だな...}
しばらく、しゃがんで彼女を眺めて、考え込みながら、家の中に入る。
ミルに、ごはんをあげて、家の掃除と洗濯を済ませ、病院に行く時間まで、ミルと、ゆっくり戯れる。
{ねえ、ミル。明日、お母さん、退院するみたいだよ。良かったね。ミルも、お留守番、よく頑張ったよね。偉かったね。}と、ミルの頭を撫でる。
ミルを見つめながら、
{姉妹猫に見えるかなぁ、ミル?}
と、ため息をつく。
簡単にお昼ごはんを済ませて、赤いキャリーバッグを一応、玄関にスタンバイして、病院に行く。
病室に入ると、待ち構えていたお母さんが、
「朝に浅井先生が来て、傷を診てね、もう、退院していいって、OKが出たのよ。」と、勢いこんで、早口に言う。
私も、お母さんの退院は、嬉しい。ミルも、喜ぶし。彼女のことは、また、後で、ゆっくり考えよう。
「良かったね、お母さん。もう、今日、帰っていいの?」と、笑顔で聞く。
「今日、帰りたいんだけど、浅井先生が、明日の朝にって言うのよ。お姉ちゃん、10時くらいに、悪いけど迎えにきてもらってもいい?」
「もちろんよ。明日の朝10時ね。やっと、家で、ゆっくり出来るね。ミルにも会えるしね。」と、一緒に喜ぶ。
お母さんの洗濯物を、病院の洗濯乾燥機で済ませ、娯楽室で、ジュースを飲んで、テレビを一緒に見ながら、ゆっくり過ごす。
3時半になったので、
「じゃあ、お母さん。明日、迎えにくるからね。」と言って、病院をあとにする。
家に着いて、車を入れようと門を開けると、彼女が、待っている。
急いで、車から出て、
「ありがとう。ちゃんと、時間、分かってくれてたんだ。」と、頭を撫でる。
急いで、玄関先に置いていた赤いキャリーバッグを持ってきて、彼女を中に放り込む。
{え?イメージ通りに、ちゃんと入ってる。奇跡だ!}
中の彼女が、ニャ~と心配して鳴く。
「捨てたりしないから、安心して。ちょっと、一緒に病院に行こう。カリカリは、帰ってから、あげるからね。」と、優しく言って、病院に急ぐ。
病院までは、車で10分くらいだ。
到着すると、もう、結構、待っている。いつも、ここは、混んでいる。
キャリーバッグを持って、受け付けに行く。
「今日は、どうしましたか?」と、女のスタッフさんが、尋ねてくれる。
{あ!名前、つけてない...もしかしたら、飼い主が見つかるかも知れないと思って、つけられなかったんだ...}
「あのう、この子猫、野良猫で、飼ってないんですけど、でも、避妊手術してもらいたくて。そのう、だから、名前は、なくって...」と、おどおどして答える。
「子猫?もう、成猫ですよ。」と、不思議そうな顔をして言われる。
「事情を先生に、お伝えしておきますので、呼ばれるまで、お待ちくださいね。」と、言ってくれたので、大人しく待合室の椅子で待つ。
彼女が、ニャ~と心配そうに鳴くので、キャリーバッグを私が見えるように、膝に抱き抱えて、
「ごめんね。もうちょっと、我慢してね。ここは、病院なのよ。ちゃんと、帰れるからね。」と、優しく言う。
{そりゃあ、成猫だけど、まだ一歳になるかどうかなんだから、子猫じゃないのかな?ねえ?}と、キャリーバッグを覗くと、彼女は、大人しく箱座りしている。
「花田さん、どうぞ。」と、アナウンスが、聞こえたので、奥から二番目の診察室に入る。
30代前半の男の獣医さんだ。前の彼女(ミュウ)のときには、いなかった先生だ。
「野良猫で、飼っていないんですね。」
と、尋ねるので、
「野良猫だと、手術してもらえませんか?」と、心配して聞く。
「いえ、こちらは、問題ありませんが」と、言ってくれるので、
「良かった。あの、それで、抜糸しないで済む糸みたいなのあるんですよね。それで、手術して欲しいんです。それから、抗生物質とかも、点滴とか注射でして欲しくて。あと、入院を2日させてもらいたいんですが。」と、嬉しくなって一気に言う。
先生が、呆れた顔をして、
「そりゃあ、そういう糸ですることも、点滴や注射も出来ますよ。入院も、2日に延長することも出来ますが、お金が、その分かかるんですよ。」と、分かってるのかな?って感じで言う。
「あ!お金は、ちゃんと払います。大丈夫です。お願いします。」と、さらに嬉しくなって、笑顔で答える。
先生は、一旦、目をつむって、気を落ち着かせてから、
「診ましょうか。その子を出してください。」と、観念して言う。
キャリーバッグから、ゆっくり出して、診察台の上に置いて、優しく押さえて、先生に見せる。
「多分、一歳くらいだと思うんです。あと、1、2ヶ月で、一歳って感じかもしれないんですが。」と、付け加えて言う。
先生が、彼女を丁寧に診察しながら、
「そうですね。歯の状況からして、一歳くらいでしょう。」と答える。
「手術は、出来ますが、本当に、さっきの条件で、いいんですか?」と、確認するので、
「はい、お願いします。なるべく、後で、この子が、楽になるようにしてあげてください。」と答える。
「手術したあと、この子をどうするつもりですか?」と、聞くので
「シェルターハウスを家の部屋の外に置いて、しばらく、外猫でいてもらって、最終的に、出来るだけ早い段階で家に入れようと考えてます。今、家猫が、一匹いますし。それに、飼い主が、それまでに見つかるかもしれないですし。」と、答える。
先生は、うなずきながら、
「ちょっと、待っていてください。院長に了解をもらって、書類を持ってきます。」と言って、診察室から出ていく。
彼女が、ゴロゴロと喉を鳴らしながら、私の膝に乗って甘えてくる。
「良かったね。手術してくれるって。ちょっと、しんどいかもしれないけど、我慢してね。」
と言って、抱きつく彼女を撫でる。
先生が、戻ってきて、その光景をみて、「わっ!懐きすぎですよ。ゴロゴロ言ってるじゃあないですか。」と、びっくりして言う。
「そんなに人に慣れているんだから、一旦は、どこかで飼われてたんでしょうね。ずっと、野良だったわけでは、ないと思いますよ。」と、さらに、悲しそうな顔をして言う。
{え?そうなんだ。じゃあ、捨てられたの。可哀想に。}と、さらに優しく撫でる。
その様子を見ながら、先生が、
「院長の了解が、出ました。手術は、月曜日に出来ます。月曜日の朝、この子を持って来れそうですか?日曜日は、夜の7時以降は、食べさせないでくださいね。出来そうですか?」と、尋ねるので、
「やってみます。」と、ちょっと不安に思いながら、答える。
先生が、すぐに悟って
「月曜日が、無理だったら、電話してください。また、日を変えましょう。出来るまで、待ちますよ。気長にいきましょう。」と、笑いながら言ってくれる。
「本当にありがとうございます。いろいろと、配慮していただいて。」と、お礼を言う。
{いい先生に当たって、本当によかった。手術出来そうだ。}
何度も何度も頭を下げて、お礼を言いながら、会計をしに行く。
{あれ?なんか安いな...}と、ちょっと不思議に思いながら、会計を済ませて、家に戻る。
カリカリを急いで家から持ってきて、
「ごめんね。お腹空いたでしょう。いっぱい、食べてね。」と、
キャリーバッグから彼女を出してあげて、与える。
彼女は、いつも通り、ご機嫌で食べている。
しばらく、彼女の様子を見つめながら、「明日も、また、夕方四時に来てくれるかな。もちろん、朝も来てね。いろいろと、バタつかせちゃって、ごめんね。ゆっくり、食べていってね。」と、優しく言って、家に入る。
え~と、つまり、明日は、お母さんの退院の日で、更に夕方には、彼女を家に入れて、そのまま、月曜日の朝、病院につれて行く。
{あれ?なんで、急に、そんなハードスケジュールになったのかな...しかも、なんか荒業っぽいな..}
🐈続く🐈