ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の会社の社長5

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「痛い、痛い。」と、うずくまっている野中さんに、駆け寄ると、右腕が、青にえている。

「大丈夫ですか?」と、ホテルの女性スタッフさんも走ってくる。
日本人の女性だ。

右腕を見て、「冷やすものを持ってきます。」とフロントの方へ走っていく。

野中さんが、起き上がって、右腕をさすりながら、ツアーディスクの椅子に、なんとか座る。

私と竹中ちゃんも、野中さんの側に立って、話しを聞く。

「とりあえず、クレジットカードを止めましょう。」と、ノートパソコンを持ってスタンバイしていた旅行会社の添乗員さんが、野中さんと、やり取りを始める。

その間に、先程のホテルのスタッフの川合さんが、氷袋を持って帰ってきて、野中さんの右腕を冷やしてくれている。

カードを何とか止められて、次に現地スタッフさんが、警察に被害届けを出すために、野中さんに、詳しいことを聞き始める。

違う現地スタッフさんに、
「財布は、出てきますかね?」と、私が、心配そうに尋ねると、

首を横に振って、
「今まで、出てきたことは、ありません。」と、残念そうに答える。

野中さんが、急に、私達のほうに、
「ごめんね、まだ、予定あるでしょ。気にしないで、2人で出かけて。」と、申し訳なさそうに言う。

「何、言ってんの?放っていけるわけないじゃない。」と、私が答えると、

竹中ちゃんも、
「そうよ!一緒にいるわよ。遊びになんか行けるわけないわ。」と同意する。

その様子を見ていた3人の現地スタッフさん達が、

「ともだち。ともだちなのよね。」

「私達、香港人は、日本人が、大好きなんですよ。」

「そう。日本の文化も、料理も大好き。日本のこと、詳しいですよ。」

と、それぞれ、笑いながら、私達に話してくれる。

私も嬉しくなって、
「私も、香港が大好きになりました。」と、笑顔で答える。

一通り終わって、竹中ちゃんが、
「総務に報告しとかないと。」と、
言うのを聞いて、

旅行会社の添乗員さんが、
「大丈夫ですよ。僕、後で会うことになってますから、僕から伝えておきます。」と、言ってくれる。

「それじゃあ、いいわね。」と、竹中ちゃんが、納得する。

「病院で、診てもらっておきますか?」
と、川合さんが尋ねてくれる。

「大丈夫です。」と野中さんが、答えるのを遮って、

「勿論です。診てもらいます。」と、
私が、きっぱり答える、

「え~。」となっている野中さんを、
川合さんが、優しく誘導する。

現地スタッフさん達と添乗員さんに、お礼を言って、私と竹中ちゃんも後を付いていく。

ホテルのエレベーターで、みんなで上がって行きながら、川合さんが、
「ホテルの上の階に通じる所に、病院が、あるんです。私達、ホテルの者も、利用しているんですよ。」と、
説明してくれる。

エレベーターが、12階に着いて降りると、しばらく歩いた所に、廊下沿いに、いろんな部屋がある。
歯医者、小児科、薬局、漢方店など。
その一室が、整形外科になっている。

中に入ると、現地のいろんな人が、受付で、座って待っている。

「待っててくださいね。受け付けしてきますから。」と、川合さんが行ってしまう。

ウォーターマシンと紙コップが、置いてあったので、お水を入れて野中さんに渡す。

「はい。のど、乾いたでしょう。」

野中さんが、「ありがとう。」と、受け取って、ゆっくり飲み始める。

竹中ちゃんにも渡して、自分の分も入れて、飲んでいると川合さんが、戻ってきた。

「ちょっと混んでいるみたいです。」と、野中さんの横に座る。

しばらくして、急に野中さんが、泣き出して、
「情けない。」と、小さい声で言う。

竹中ちゃんと顔を見合わせてから、

「大丈夫よ、問題ないって。別に命を取られたわけじゃないんだし。何も、問題ないわ。」と、必死に励ます。

川合さんも、
「そうですよ。大丈夫ですよ。命さえあれば、大丈夫です。」と、
笑いながら優しく言ってくれる。

野中さんが、落ち着いて、ようやく泣き止む。

川合さんの香港語が、流暢なので、
「川合さんは、こちらで働いて長いんですか?」と、尋ねてみる。

「まだ、3年です。大分、慣れてきました。香港の方は、本当に日本が大好きなので、みんな親切に、いろいろ教えてくれます。」と、楽しそうに言う。

川合さんから、香港のことをいろいろ聞いていると、野中さんが呼ばれたので、野中さんと川合さんの2人で、診察室に行く。

待合室に残った竹中ちゃんに私が、
「野中さん、骨折してるんじゃないかな?そんな気がするんだけど。」と、私が正直に言う。

「え!骨折!それだったら、大変だよね。でも、野中さん、パスポートは、ホテルに置いてて、良かったよね。」

「本当にね。パスポート盗られてたら、明日、帰れなかったよね。」

2人で、いろいろ話していると、川合さんに付き添われて、野中さんが、戻ってきた。

「骨折は、していませんでした。打撲だそうです。」と、川合さんが、安心させるように、私達に言う。

「本当!良かった。レントゲン撮ったの?」と、喜んで、私が聞くと、

「ううん、レントゲンは撮ってない。塗り薬をもらったの。」と、
野中さんも、ホッとしたように答える。

{え~。レントゲンも撮らないで、骨折してないとか、本当に、ここの医者、大丈夫なのかなぁ。}と、
私が、しばらく無言でいると、それを察した川合さんが、

「大丈夫ですよ。診てもらった先生は、香港でも有名な女医さんですから。名門大学を出ている優秀な人なんですよ。美人でも有名なんですけどね。」と笑って教えてくれる。

{それなら大丈夫なのかな。私の取り越し苦労だったか...}

会計で、川合さんが、金額を告げられると、竹中ちゃんが、
「これ、使って!」と、素早く、川合さんに、札を渡す。

「え!ごめんね、帰ったら返すから。」と、野中さんが恐縮する。

「ええんよ。お互いさまやわ。」と、竹中ちゃんは、優しく言う。

竹中ちゃんは、太っ腹で優しい。
竹中ちゃんは、関西の本社にいるときからの私の友達だ。


とりあえず、一段落して、川合さんにお礼を言って、

「少し、休もうか。」と、一旦ホテルの部屋に戻ることにした。

竹中ちゃんと私は、同じ部屋だ。
野中さんは、別の階の部屋なので、落ち着いたら、私達の部屋に来ることにして、一旦別れた。



🐈続く🐈