ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の研究のお仕事14

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かすみさんは、すっかり、私に敵対心を持ってしまった。
研究室でも、私をライバル視して、研究の仕事を懸命にするようになった。

私は、かすみさんが、研究を頑張っているので、研究室の拭き掃除をして、助けてあげようと思って、していた。

汚れた水を外に捨てようとバケツを持って、研究室の横のドアから出て、捨てていると、かすみさんが、急いでやってきて、

「花田さん、やめてよ!そんなの事務所とか工場の人に見られたら、わたしがいじめてるみたいに思われるじゃないの!」と、恐い顔で私を叱りつけた。

「え?バケツの水、捨ててるだけですよ...」と、私は、オドオドして小さい声で答える。

「いいから、早く入って!」と、私を急いで研究室に戻らせる。

{誰も、そんなこと、思わないと思うんだけどな...}

私は、何か言ったら、かすみさんが、余計に怒るような気がして、何も言わずに、黙って言うとおりに戻った。

バケツを置いて、自分の机にトボトボ戻ると、田島部長が、
「どうですかな、花田さん。基本的な研究は、一通り終わったみたいですし、新商品開発をしてみますかな?」と、笑顔で尋ねてきた。

「え!あっ、はい!」と、私は、びっくりしながらも、喜んで答える。

「あ、でも、私で、大丈夫でしょうか?」と、ちょっと心配になって、聞いてみる。

「ふふふ、簡単なものからいきますから、大丈夫ですよ。それに、気分転換にもなりますからな。」と、笑って言ってくれる。

{ああ、田島部長、気にしてくれてたんだな。}

私は、田島部長の優しさに感動して、
「はい。頑張ります!」と、笑顔で答える。

一気に気分が良くなって、その日は、ウキウキ気分で、お昼を食べに食堂に行った。

食堂は、事務所の真横にあって、事務所の人や工場の人たちが、お昼を食べに来る。

2社のお弁当の配達があって、私も毎日取っていた。
そのうちの、さくら弁当が好きだったので、さくら弁当のおかずだけを取っていた。
ご飯とおかずが付いているのだが、おかずだけでも取れて、そのぶん、お安くなる。

温かいご飯が、1パック付くのだが、量が多すぎるので、私は、家から、ご飯だけ持ってきていた。

真美ちゃんは、いつも、家からお弁当を持ってきていた。
私は、お昼は、真美ちゃんと谷口さん、岡さんと食べる。

お弁当を取ってきて、真美ちゃんの横に座ると、真美ちゃんが、
「あれ?今日は、なんか、ご機嫌さんですね。」と、笑いながら言ってくる。

「えへへ、分かる?ちょっと、仕事で、いいことがあって。」と、私も笑顔で答える。

「花田さんは、すぐに顔に出るから、分かりやすいわ。」と、谷口さんが、笑いながら言う。

みんなが、笑いながら頷く。

私が、ふと急に気が付いて、
「真美ちゃん、いつも、お弁当作ってきて偉いよね。」と、真顔で言うと、

「やですよ~。お母さんに作ってもらってるんですよ。」と、私の腕を、肘でつつきながら、笑って言う。

みんなも、大笑いする。

楽しくみんなと話をしながら、美味しくお弁当を食べる。
楽しい時間だ。

だいたい、谷口さんと岡さんが、先に食べ終わって事務所のほうに戻る。

真美ちゃんは、食べるのが遅いので、
食堂は、ほとんど人がいなくなる。
私は、早食いなのだが、真美ちゃんが好きなので、ずっと一緒にいる。

食堂の前の隅のほうで、食堂のおばちゃんが片付けをしている。
食堂のおばちゃんは、市内に駄菓子屋のお店も持っていると、前に、工場の人に聞いたことがある。

おばちゃんが、何かに気付いて、隅にある横の扉を開けた。

すると、白い猫が、ちょこんと座って挨拶している。
真っ白な猫で、長いしっぽの先だけが、黄色い。
ペンキなのかな?と一瞬思ったが、黄色いのは、毛の色のようだ。

真美ちゃんが、私が見つめているほうを見て、
「ああ、ミーちゃんですよ。」と、教えてくれる。

「ミーちゃん?」

「そうです。毎日、人がいなくなった頃にあそこに来て、おばちゃんから、残りものをもらうんですよ。ほら。」

見ると、おばちゃんが、ミーちゃんの専用らしきお皿にいろいろ載せてあげている。

ミーちゃんは、礼儀正しく食べている。

食べ終わると、大人しく去っていく。

「ミーちゃんは、本当に礼儀正しいんですよね。この周辺は、工場地帯だから、他でも、もらってるみたいですよ。」と、真美ちゃんは、詳しく教えてくれる。

確かに、帰り道で、ミーちゃんが、別の会社の塀の上を歩いているのを見たことがある。

「ふ~ん、本当に賢いし、礼儀正しいんだね。」と、私は、ほとほと感心する。

ミーちゃんは、それからも、食堂のおばちゃんのところに通っていた。
その様子を、真美ちゃんと、いつも、楽しく見ていた。

でも、ある日、ミーちゃんは、一匹の子猫と一緒にやってきた。
その子猫は、ミーちゃんそっくりの真っ白な猫で、ただ、黄色のポイントが、ミーちゃんは、先っぽなのに、その子は、しっぽの真ん中だけが黄色かった。

「ミーちゃん、子ども産んでたんだね。」と、ひとけの少なくなった食堂で、真美ちゃんに言うと、

「あ、本当だ。そっくりですね。」と、真美ちゃんも楽しそうに言う。

おばちゃんも、嬉しそうに、2匹にご飯をあげている。

ミーちゃんとその子猫は、礼儀正しく食べている。
ミーちゃんは、その子猫に、いろいろと教えているようだ。

{ミーちゃんは、賢いだけでなく、子育ても立派なんだな。野良で苦労してるのに、あんなに優しく教えて..}

本当に頭が下がる思いだ。
全く、私なんか、まだまだだわ。
反省しまくる私だった。

これから、ミーちゃんとその子猫で、2匹で通うようになるんだなと思って微笑ましく、真美ちゃんと見ていたのだが、ミーちゃんは、違った。

次の日から、その子猫が一匹で来るようになった。
ミーちゃんは、その子猫に場所を譲ったのだ。

その子猫は、ミーちゃんと同じ作法で、おばちゃんから、ご飯をもらう。

おばちゃんも、心得たように、いつものようにふるまっている。

私が、唖然と見ていると、
「あれ!ミーちゃん、餌場、譲ったんだ!なんて、律義なんですかね~。」と、真美ちゃんが、感心して言う。

「別に残り物いっぱいあるから、二匹で来ていいのに。そこが、ミーちゃんなんですかね。」と、さらに続ける。

{本当にミーちゃんは、すごい。ミーちゃんは、あらゆる点で、すごすぎる。}

私は、感服して、何も言えない。

反省しながら仕事を終えて、帰ろうと、会社の門を車で出たところで、ミーちゃんが、隣の大会社の塀の上で優雅に身繕いをしているのを見た。

私のほうをチラッと見て、
{ご飯の場所には困りませんのよ。御心配なさらないでね。}
と微笑むように優しく私を見つめてくる。

見事だ。
私は、ミーちゃんに敵わない。
まだまだ、未熟者だ。
小さいことに拘ってないで、強く生きなくちゃ!

私は、ミーちゃんにお辞儀して、車を走らせる。