ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の研究のお仕事13

↑カテゴリー別のタイトルで編集しています。【輝の1番目の会社】【輝とミルのこと】【日向とミュウ】をそれぞれクリックすると、1番目の会社の話し、ミュウの話しだけが見れます。お好きな物語をお読みください。🐈


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↑ソファ―でくつろぐミュウ


会社の駐車場は、会社の敷地の奥のほうにあって、みんな、そこにとめていた。

ある日、帰ろうとすると、工場で働く男の人が待っていた。
誠ちゃんとみんなから、呼ばれている人だ。

誠ちゃんは、
「ねえ、今週の日曜日どこかへ遊ぶに行かない?」と尋ねてきた。

私は、「今週の日曜日は、用事があるので。」と、やんわりお断りした。

誠ちゃんは、
「そうか。」と、すんなり引き上げた。

誠ちゃんが、どうのというわけではなく、全くその気がなかった。

あっさり引き上げてくれたことに、安心していた。

でも、しばらくして、また、誠ちゃんは、駐車場で待っていた。

「ねえ、じゃあ、来週の日曜日は、どうかな?」と、尋ねる。

「来週の日曜日も、用事があるので。」
と、私は、やんわり断る。

「そうか。」と、誠ちゃんは、引き上げる。

この後、何回か同じやりとりが、繰り返されることになる。

そうこうしているうちに、やはり、会社中で、うわさが、広がってきた。

私のほうも、だんだん、怖くなってきていた。
何とも思っていない人から、誘われ続けるのは、本当に恐い。
はっきり断ればいいのだが、はっきり言うのも怖かった。

私は、お昼休みは、研究室を離れて、事務所のロッカー室のほうで、過ごしていた。
かすみさんと谷さんの邪魔をしないように、気をつかってのことだったが、私自身も、こっちにいるほうが、楽しかった。

事務所には、女の人が五人いた。
お昼休みにロッカー室で寛ぐのは、このうちの三人で、谷口さん、岡さん、真美ちゃんだ。
谷口さんが、リーダー的な人で、岡さんは、谷口さんの子分みたいな感じだった。
よく、岡さんは、谷口さんに泣かされていた。

真美ちゃんは、2人から、少し距離を置いた立場でいた。
真美ちゃんは、双子で、お姉さんがいる。
小さい頃から、区別のためか、自然にそうなったのか、お姉さんが、ピンク系のものを、真美ちゃんが、水色系のものを身につけるようになっていたらしい。
私は、聞きながら、別にどっちもピンクでいいんじゃないかななんて思っていた。

真美ちゃんは、お父さんを中学生の頃に亡くして、商業高校を出て、この会社に入っていた。

だから、しっかりしているのかなと思いながら、「大変だったね。」なんて言うと、

真美ちゃんは、「そんな人は、いっぱいいますから。」と、笑顔で答えた。


真美ちゃんとは、会ったときから気が合った。
真美ちゃんは、ミュウと同じで世話女房タイプで、私に、この頃から、いろいろアドバイスをしてくれていた。
私のほうが年上だが、真美ちゃんには、ずっと甘えてしまうし、泣き言も言う。

以後、真美ちゃんとは、ずっと長い付き合いになる。
今でも、真美ちゃんとの付き合いは、続いている。
真美ちゃんは、今でも、私の良きアドバイザーであり、親友だ。

お昼休みに、真美ちゃんに、誠ちゃんのことを相談していた。
真美ちゃんは、
「それは、恐いわ。」と、すぐに、分かってくれた。

でも、ちょうど、給湯室に居合わせたかすみさんが、
「誠ちゃんみたいな、純粋な人に好きになられるなんて、素敵なことだわ。なかなか、ないことよ。光栄なことじゃないの。」と、笑顔で言ってきた。

私が、答えに困っていると、話を聞いていた谷口さんが、「え~、私だったら嫌だわ。じゃあ、かすみさんだったら、喜んで誘いに乗るわけ?」と、ピシャリと言い返した。

「誠ちゃんは、私だったら言わないから、すごいことだと言ってるのよ。」と、かすみさんは、言い返した。

真美ちゃんは、「好きでもない奴から誘われても嬉しくなんかないわ。」と、言い返した。

この後、言い争いが続く。

私は、みんなのやり取りをずっと見ながら、かすみさんの顔を見て、ふと、急に頭に浮かんだことを口に出してしまった。

「かすみさん。かすみさんは、白雪姫に出てくるリンゴを持ったおばあさんに、そっくりです。」

みんなが、唖然として、私を見る。

でも、私は、答えが分かったのが嬉しくて、続けて笑顔で言ってしまう。

「うん。そう。やっと分かった。白雪姫のおばあさんに、そっくりなんです。うん、そうなんです。」と。

真美ちゃん、谷口さん、岡さんは、唖然としたままだ。

かすみさんが、恐い顔をして、怒りながら、
「花田さん、なに、言ってんのよ。」
と私を睨みつけながら言って、研究室のほうに去っていってしまう。

私は、何故、怒られたのか訳が分からずに、きょとんとして、かすみさんが、去っていくのを見ている。

真美ちゃんが、
「ちょっと。やばいんじゃない?」と、心配そうに、私に囁く。

「え?でも、そう見えたんだよ。」と、私はきょとんとして答える。

「正直すぎるわ。まあ、気をつけなさいな。」と、谷口さんが、私に優しく言う。

「うん。」と、私はいまだに、意味が分からずに小さく答える。

私は、たまに、直感が降りてくる。
でも、本当に、たまにだけだ。
知りたいことには、降りてこず、ふとしたときに降りてくる。
まぎれもなく、100%間違いのない、これが正解だという直感だ。

工場で働いている若いリーダーの男の子が、横にいるかわいい女の子と立ち話をしていて、私に気がついて、挨拶してきた。

私は、2人を見て、直感が降りた。

そして、そのまま、口に出す。
「ああ、お似合いね。結婚するのかな。」と。

2人は、ビックリして言う。
「なんで、分かるんですか?俺らが付き合っているの、誰にも話してないのに。」

「え~、どうして~?そうなんです。近々、結婚するんです。」

「だって、2人の幸せな姿が見えるし、本当にお似合いだから。」と、私は、正直に言ってしまう。

2人は、照れながら、お礼を言う。


この頃の私は、若かった。
いや、バカだった。
みんなが、同じように、たまに、直感が降りると思っていた。
そして、みんなに比べると、私は、どちらかというと、少ないほうだと思っていた。

本当に、希にしか降りてこないし、大したことでは、本当になかった。

けれども、後で、後悔することになる。

誠ちゃんのことは、誰かが、誠ちゃんに優しく言ってくれたみたいで、待ち伏せは、なくなった。


ただ、かすみさんの私に対する敵対心が、ひどくなってしまった。

あのことばを、かすみさんに対する宣戦布告と思ったようだ。

それだけにとどまらず、事務所のほうでも、勝手に、かすみさん派と花田さん派みたいなものが出来てしまった。

事務所には、中堅リーダー的な存在の男の人が2人いる。
一人は、上田さんで、かすみさんの大ファンだ。
かすみさんに、
「いつでも、何でも言ってください。マドモアゼル。」とよく言っている。


正直、ちょっと気持ち悪いと思っていたけれど、どうでも良かった。

もう一人が、大島さんで、上田さんのことをライバル視している。
大島さんが、私のほうの派閥の中心らしい。

真美ちゃんが、親切にいろいろと教えてくれていた。

真美ちゃんは、
「もちろん、私は、花田さん派よ。」と、笑いながら言う。

正直、そんな派閥は、願い下げだった。
みんなが、かすみさん派でいいのに。
というか、かすみさんに対抗する気も全くなかった。

ただ、静かに研究をしたかった。

そんな私の思いをないがしろに、だんだん、騒ぎは大きくなっていく。

家に帰ると、ミュウに毎晩、慰めてもらう。

「ミュウ。なんで、こんなことになっちゃったのかな?」
ミュウは、優しく私を舐める。

以後、私は、思い付いたことを、口に出さないようになった。
むやみに言ってはいけないのだと、痛いくらいに分かったからだ。

「ミュウ。どうしてなのかな?」

ミュウは、優しく私を見つめながら舐め続ける。