ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の研究のお仕事12

↑カテゴリー別のタイトルで編集しています。【輝の1番目の会社のこと】【輝とミュウのこと】【日向とミュウ】をそれぞれクリックすると、1番目の会社の話し、ミュウの話しだけが見れます。🐈


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↑お腹を舐めているミュウ


私の研究室勤務は、始まった。
研究室の田嶋部長は、すこしお年を召したバーコード髪形の方だった。

田嶋部長は、私にあらゆるジャンルを教えてくれた。
まず、手始めに、気になる他社メーカーの商品を買いに行かせた。

いろいろ買って持って帰ると、どこに興味を持ったのか聞いてくれた。
そのうちの一つを選んで、商品の成分分析をさせてくれた。

成分分析の基礎的な方法は、谷さんが指導してくれていた。
結果が出ると、田嶋部長に報告した。

谷さんが担当していた自社製品の毎日の品質管理の分析も教えてもらっていて、これは、私の担当になった。

毎日、工場で作られたものは、ロット毎に工場の人がサンプルを研究室に持ってきてくれるので、それを分析して品質管理をしていた。

私は、谷さんの研究の指導が多かったので、かすみさんを不安にさせていたようだ。

でも、この頃の私は、分析が楽しくて仕方なかった。

特にガスクロマトグラフィーが面白くて、はまっていた。
田嶋部長は、私に、いろんなカラムを使っていいと言ってくれていたので、カラムの魅力にも魅せられていた。

{ああ、なんてカラムは美しいし、奥が深いんだろう。}
幾重ものカラムの曲線を見ながら、時間を経つのも忘れ、毎日、没頭していた。

谷さんは、「カラムは、高価なものだから、気をつけて扱うように。複雑なものほど高くなるからね。」と、注意してくれた。

けれども、田嶋部長は、私に、あまり、お金のことを言わずに、私の興味の赴くものを私に与えて好きなようにさせてくれていた。

田嶋部長は、優しい方だった。

たまに研究セミナーがあると、私を連れて行ってくれた。
終わって研究室に戻る前に、いつも、喫茶店で、甘いものをご馳走してくれた。

「さあ、遠慮せずに、好きなものを頼みなさい。このパフェなど、どうですかな?」と。

田嶋部長は、研究室に戻る道すがら、いろんな話しもしてくれた。

後に話してくれたことだが、田嶋部長の奥様は、難病指定のご病気だった。

にも関わらず、田嶋部長夫婦には、養子が3人もいた。

「妻は、血液の難病でしてな。まあ、子供は、無理でしてな。ちょうど、その頃、県の職員が、里親になりませんかと来ましてな。」

私は、黙って、ずっと聞いていた。

「県の奴らは、卑怯でしてな。もう一人どうか?更にもう一人どうかと来るわけですな。今いる子がいるのに、断れないでしょう。」と、苦笑いしながら話してくれた。

{田嶋部長は、優しい方だ。世の中には、こんな人もいるんだな。}と感動していた。

{しかし、県の人のやり方は、どうなんだろう?田嶋部長の人の良さにつけこむやり方だ。自分が、探すのが大変だからって、本当に卑怯だ。}
私は、静かに理不尽を感じていた。

「上の子は、今度、高校生になったのですがな、なかなか、言うことを聞かないし、どうもね。不良ってやつですな。」と、田嶋部長は、笑いながら続けた。

{いつか、その子が大きくなって、田嶋部長夫婦の優しさと思いやりに気づくときが来るんだろうな。今は、分からないかもしれないけど、いつか、きっと。}
私は、深く感銘を受けていた。
早く、研究で、一人前になって、田嶋部長のお役に立ちたいものだとも思った。

田嶋部長は、役に立つ本も教えてくれて、研究室にあるいくつかの本を選んでくれていた。

しばらく分析に明けくれていた。

その日も、分析に没頭し、分からないところを田嶋部長が勧めてくれた本を読みながら、考え込みながら、試行錯誤しながらやっていた。

切り上げて帰ろうと更衣室に入ると、かすみさんが、待ち構えていた。

ちょっと怖いオーラだったので、更衣室に入った途端、ちょっとびびった。

「かすみさん、どうしたんですか?もう、帰られたのかと思ってました。」と、平常心を取り繕いながら聞いてみた。

「ねえ、花田さん。私のこと避けてない?帰りとか、時間ずらしてるみたいだし。」と、かすみさんが、凄む。

「いえ、そんなことないですよ。ただ、分析が長引いたりするだけで。」
私は、着替えながら、たどたどしく答える。

「私、女の子の後輩が入ってくるって聞いたときから楽しみにしてたのよ。花田さん、私の髪形とか、身の回りの変化とか、ちっとも気づかないし。」

「.....」

{いや、私に、それを求めるのは、ちょっと無理のような..髪形??アクセサリーとかのことかな?誉めたりしなきゃいけなかったのかな?}

「あ..すみません。私、おしゃれに疎くて。あまり、気づかないみたいで..」
と、私は、とりあえず謝る。

「そう?仕方ないわね。花田さんは、じゃあ、何に興味があるの?」

「あ、猫です!!」
私は、きっぱり答える。

「猫??私は、犬を飼っているのよ。まあ、いいわ。帰りましょう。」

私達は、2人で一緒に駐車場に向かった。

かすみさんは、谷さんが、なかなか結婚の話しをしてくれないとかいろいろ私に話し続けていた。

かすみさんの話しを半分、上の空で聞きながら、
{本当に、谷さん、早く結婚すればいいのに..}と半分、真剣に思っていた。

どうも、私は、かすみさんが苦手だった。
かすみさんには、あんなことを言ったが、多分、無意識に時間をずらしていたのかもしれない。


その頃、家では、シルバーとライサーが、だんだんと成長していた。

今までは、ミュウが、外で拾ってきたヒモやら落葉やらで遊ぶのを見て、
{お母さん、すご~い。}と、
尊敬の眼差しで見ていたのだか、ライサーもシルバーも一人で外に行けるようになり、狩りを覚えた。

特にライサーは、狩りが上手かった。
雀とかを生け捕りにしては、お母さんに誉めてもらおうと持って帰った。
その度に、お母さんは、悲鳴をあげながら、ライサーの頭を撫でていた。

狩りを覚えたライサーとシルバーは、ヒモや葉っぱを狩って遊ぶミュウを見ても感心しなくなった。

まあ、当然のことだ。

私が、ミュウに狩りをおしえなかったのだから、仕方ない。
ミュウは、生き物を殺したことがなかった。

結果、後に、ミュウは、死ぬということを最後まで知らずに天国に行くことになる。

でも、2人はミュウには、逆わらなかった。
2人にとって、ミュウは、大切なお母さんに変わりないのだ。

そんなミュウを見ながら、
「ミュウ、お互いいろいろ大変だよね。」と、話しかける。

ミュウは、「ん~?」と鳴いて、
私の手を優しく舐めて慰めてくれる。




🐈続く🐈