輝の研究のお仕事10
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シルバーとライサーを家で飼えることになって、ミュウと3匹で一緒に暮らせるようになって、楽しく過ごしていた。
お父さんもお母さんも、3匹にメロメロで、甘やかし放題になっていた。
少し落ちついた頃、私の会社の入社日になり、初めての会社勤めが始まった。
私の初めての会社、クィーン化学株式会社は、本社が大阪にある。
私は、家のある地元の工場のほうに通う。
敷地内には、商品を生産する工場と事務所、そして、私が働くことになる研究室がある。
そして、少し離れた場所に試験所がある。
入社日は、本社のほうで行われた。
この時代は、就職氷河期だったので、新入社員は、私を入れて3人しかいなかった。
本社勤務の事務で働く女の子と、同じく本社勤務の営業で働く男の子だ。
女の子は、葉子ちゃんで、気が合いそうなしっかりした感じの子だった。
男の子は、何故か、トランプの柄のシャツを来ていた。
何か変な奴って印象を持ったが、本社勤務の奴だから、別に関係ないやと思って、気にしていなかった。
社長の挨拶を聞き、簡単な説明を受け、みんなの前で紹介されて、その日は、終わった。
社長も本社の人もみんな優しくて、いい会社に入れて良かったと、つくづく感じ入っていた。
葉子ちゃんは、
「この後、一緒にお茶でもしたかったけど、あの人も一緒になるから、またね。」と、そのまま帰ってしまった。
{あの人、つまり、トランプマンのことか...確かに、私と違って、葉子ちゃんは、本社勤務だからかな?}と、妙に一人で納得して、別れた。
この日は、金曜日で、土日は、休みだったので、私は、おばあちゃんちに泊まって、ゆっくりして土曜日に家に帰ることになっていた。
{じゃあ、早速、おばあちゃんちに行こうかな。}と私は、嬉しげに本社を後にした。
電車に乗ろうとすると、何故か、トランプマンが付いてくる。
「危ないから、途中まで送りますよ。」と、トランプマンが言う。
{危ない?まだ、昼間なんだけど。}
「いや、おばあちゃんちに行くから。」と断ったが、ずっとついてくる。
とりあえず最寄りの駅までの切符を買おうと、路線図を見る。
{ん?私、今まで、お父さんに車で、連れていってもらってたから、行き方が、ちょっと..}と佇んでいると、トランプマンが、
「どこになるんです?」と聞くので、素直に答えると、最寄りの駅を教えてくれた。
「ありがとう。」と、切符を買って改札口に行くと、トランプマンが、まだ、ついてくる。
「もう、大丈夫ですよ。」と、言っても、おばあちゃんちまで、送ると言って、ついてくる。
最寄りの駅に着いて、
「じゃあ、これで。ありがとう。」と言っても、乗るバスを探して、一緒に乗ってくる。
移動中、別に、そんなに話さない。
ただ、ついてくる。
トランプマンが、何か話していたのかも知れないが、私が、トランプマンに感心がまるでなかったようで、何も記憶に残っていない。
{ふ~ん、変わった人もいるもんだな。}という印象しか残っていない。
バスを降りて、また、私が迷っていると、トランプマンが、また、方向を教えてくれた。
私は、方向音痴だった。
やっと、おばあちゃんちの家に着いた。
すると、トランプマンは、
「それじゃ、ここで。」と、去っていった。
「ありがとう。」とお礼を言ったが、
{何だったんだろう?単に、私が頼りなさそうで迷子になりそうに見えてたのかな??}
頭の中は、???で一杯だった。
しかし、それよりも、おばあちゃんに会いたいほうが大きくて、すぐに忘れて、扉を開けた。
「おばあちゃん、来たよ!」
おばあちゃんは、満面の笑みで出迎えてくれた。
「輝ちゃん、スーツが、よお似合って。もう、立派な社会人やなぁ。さあ、就職祝いや。今日は、ご馳走やしな。上がって、ゆっくりしよう。」と、私を家に上げてくれた。
その日は、焼き肉にしてくれていた。
おじいちゃんとおばあちゃんと3人で、楽しくおしゃべりしながら、いっぱい食べた。
そのときに、やっと、トランプマンのことを思い出して、送ってくれたことをおばあちゃん達に話した。
おばあちゃん達も、
「それは、変わった子やけど、まあ、親切な子やな。心配やったんやろう。」と言ってくれた。
葉子ちゃんとも、トランプマンとも、その日以来、結局、私は、会うことがなかった。
後に、葉子ちゃんは、一年もしない間に会社を辞めたと聞いた。
何故辞めたかは、詳しく知らないが、何かトラブルがあったらしいということだけを聞いた。
トランプマンも、数年後に会社を辞めた。
金持ちの女の人と結婚して婿入りしたので、その家の事業を継ぐので会社を辞めたと聞いた。
今でも、トランプ柄のシャツだけを思い出す。