輝の研究のお仕事9
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左:シルバー 右:ライサー
赤鼻を気にしているライちゃん
お父さんが、「我が家で飼える子猫は、一匹だけだ。」と我が家に通達を出したので、私は、必死にもう一匹の貰い手を探し続けた。
友達はもちろん、動物病院でも聞いてみたが、どうしても見つからなく、チラシにでていたホームセンターの譲渡会に参加することにした。
譲渡会といっても、今とは違って、昔のことなので、かなりアバウトなものだった。
近所のホームセンターの屋外で行われていた。
まず、受付に行くと、譲渡したい猫の情報を書いた。
性別、種類、年齢、名前、連絡先という簡単なものだった。
ワクチンの有無、病気の有無等は、全く聞かれなかった。
ただ、男の子には青いリボン、女の子には赤いリボンが付けられる。
「いい人に巡り会えるといいですね。」と、受付のお姉さんは、微笑みながら、仮設テントの下の白い柵で囲まれた丸いサークルに案内してくれた。
「こちらに、猫ちゃん達を入れていただいて、お待ちください。帰られるようなら、連絡先にご連絡するので、大丈夫ですよ。」
と、親切に言ってくれた。
私とお父さん、お母さんは、顔を見合わせて、
「いえ、こちらで最後まで待たせていただきます。」と即答した。
お姉さんは、優しく微笑みながら、
「それでしたら、こちらから少し離れたあちらのテントで、お待ちください。そこから、猫ちゃんたちの様子も見れますしね。」と、私達に教えてくれた。
私達三人は、無言でうなずきながら、
キャリーケースから、ライちゃんとシルちゃんを出した。
「ライちゃん、シルちゃん、しばらく、このサークルの中でいてね。いい人がいたら、行っていいんだからね。」と、私は優しく抱き締めてサークルにそっと入れる。
お母さんも、お父さんも心配そうに2匹を見ている。
しばらく様子を見ていると、サークルの中で2匹は、静かに座っている。
戸惑っているようだが、鳴いたりもしない。
サークルには、既に、他の子猫が5匹入っていたが、他の子猫達とじゃれたりしないし、関心もないようだ。
パニックになっていないようなので、静かに、離れたテントに三人で移動する。
移動した先に私達がいるのが、分かっているようで、2匹は、あまり慌てていないようだ。
テントの中に設置されている椅子に座って、三人で大人しく様子を見ていた。
更に3匹の子猫が、サークルに入れられた。
全部で、10匹の子猫だ。
いろんな種類の子猫がいる。
ライちゃんとシルちゃんは、キジトラの雑種だが、ペルシャやチンチラみたいな子猫もいる。
どの子猫もはしゃいだり、他の猫とじゃれたりしているが、うちの2匹は、ボ~っと座っている。
「なんか2匹とも、あまり動かないね。」と、心配そうに言うと、
「戸惑っているのかしらね。ほら、うちの子は、おっとりしてるから。」と、お母さんが答える。
お父さんも、
「うん、利口な証拠だ。」と、頷きながら言う。
しばらくして、猫を飼いたい人達がサークルにやってきた。
{来た!来た!誰にもらわれるんだろう?}と、ドキドキしながら見守る。
{それにしても、猫を連れてきた人が、私達以外、誰もこの場にいないのは、なぜなんだろう?}と、不思議に思いながら、様子を見続ける。
思ったより、多くの人が見に来てくれている。
中には見に来ているだけの人や触りたいだけの人もいるようだが、家族で探している人達もいる。
サークルの中の子猫達が、いっせいに、かわいいアピールを始める。
伸ばされた手にスリスリしたり、甘えたりしている。
みんな目一杯、{私、かわいいでしょう?}と独自のアピールを繰り出している。
{うちの子達はどうかな?}と、
ワクワクしながら見ると、
{!!!何故だ。さっきの位置から、ほとんど動かずにいる!!}
私が唖然と見ていると、
「ほら、お姉ちゃん。別にアピールしなくても、触ったりだっこしてもらえば、いいんだから。」とお母さんが、私の気持ちを察して言ってくれる。
「うん、そうだよね。」と、私は、気を取り直して見続ける。
多くの人が、サークルから、気に入った子猫を自由に出して、だっこしたり確認したりしている。
「この子、可愛いね。ほら、こんなに喜んでる。」とか
「こいつ、すっごくやんちゃで元気いいよ。」とか、
「見て!こんなに、もう僕に懐いてるよ。」とか
いろんなセリフがあちらこちらから聞こえてくる。
今のところ、ライちゃんもシルちゃんも、一触りもしてもらっていない。
「誰にも触られないね. ..」
お父さんとお母さんは、無言だ。
そうこうしているうちに、一匹一匹、もらわれていく。
サークルの中の子猫は、だんだん減っていく。
「どうして、触られないのかな?」
お父さんとお母さんは、さらに無言だ。
そのとき、一人の男の子が、シルちゃんをサークルから出して抱っこした。
野球帽をかぶった、元気な小学生くらいの男の子だ。
シルちゃんは、抱かれて大人しくしている。
その男の子は、シルちゃんを気に入ったようだ。
私達は、固唾を飲んで見守る。
「その子が、いいの?」と、お母さんらしい人が男の子に尋ねる。
男の子は頷いて、シルちゃんを優しく撫でている。
「やめなさいよ、そんな子。ほら、こっちの子のほうが可愛いし、元気がいいわ。」と、そのお母さんは、真っ白な子猫を男の子に差し出して、シルちゃんをサークルに無造作に戻す。
{何すんのよ。シルちゃんのほうが、よっぽど可愛いし、頭いいし、上品なのに。}と腹立たしく見ていると、
「がらの悪そうなおばはんね!あんな家族には、シルバーは、あげられないわ。」と、お母さんが、怒る。
「見る目のないおばんやな。シルバーには、合わないな。」と、
お父さんも怒って言う。
「そうよ。あの男の子には、シルちゃんのほうが、良かったと思うけど、あんなお母さんの家じゃダメね。」と、私も怒りながら言う。
結局、その男の子は、白い子猫を連れて帰った。
それから、いろんな人が見に来ては、触ったり、抱っこしたりしていったけれど、シルちゃんもライちゃんも、一触りもされなかった。
「ライちゃんは、今まで一回も触られてないね。」と、
私が悲しそうに言うと、
お父さんが、突然
「もういい!連れて帰るぞ。」と、言い出す。
「え?」と、私がお母さんと顔を見合わせていると、
「だから、2匹とも、家で飼っていいって言ってるんだ。ほら、早く連れてきてやれ。」と、お父さんが顔を背けながら言う。
私は、満面の笑顔で、
「うん!すぐに連れてくる!」と、
急いでサークルのほうに行く。
「ライ!シル!もう、いいよ。一緒におうちに帰ろう。」
ライちゃんとシルちゃんが、猛ダッシュで私の所に近寄ってきて、スリスリ甘える。
「ごめんね。嫌な思いさせちゃったね。」と、謝りながら優しく二匹を撫でる。
その間にお父さんとお母さんもこっちに来た。
「さあ、帰りましょう。」とお母さんが、キャリーケースを開けて促す。
「うん。」
2匹は、素直にキャリーケースに入る。
受付に行って、「連れて帰ります。」と言うと、
「一ヶ月に一回していますから。」と、お姉さんが気を遣って言ってくれる。
「いえ、この子達は、家で飼うことにしましたから。」と、お父さんが毅然と答える。
私とお母さんは、顔を見合わせて笑う。
帰りの車の中でお父さんが、
「ライサーは、可愛いのに触りもしないなんて、みんなどうかしてる。」と、ぶつぶつ文句を言っている。
{ふふふ、ライちゃんの顔を見て、仮面ライダーみたいだから、ライサーだって名付けたくせに。}
2匹とも飼えるようになって、私は、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
弾んだ気持ちで、ライちゃんとシルちゃんと家に帰った。
ただ、ライちゃんとシルちゃんが帰ってくるのを見るなり、不機嫌になった猫が一匹いた。
ミュウだ。
ミュウは、ライとシルの姿を見るなり、「シャー!」と恐い顔で怒った。
多分、
{何、帰ってきてんのよ!鳥かごで待機して誰かにもらわれるのが、ルールでしょう。この卑怯者!}と、思っているのだろう。
P.S.
はなさん、ありがとう。だいぶ、元気になりました。
島猫さん、ブックマークに一方的に弱音を書いてごめんなさい。おかげで気持ちが楽になりました。