ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の研究のお仕事9

↑カテゴリー別のタイトルで編集しています。【輝の1番目の会社のこと】【輝とミュウのこと】【日向とミュウ】をそれぞれクリックすると、1番目の会社の話し、ミュウの話しだけが見れます。🐈


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左:シルバー 右:ライサー

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赤鼻を気にしているライちゃん


お父さんが、「我が家で飼える子猫は、一匹だけだ。」と我が家に通達を出したので、私は、必死にもう一匹の貰い手を探し続けた。

友達はもちろん、動物病院でも聞いてみたが、どうしても見つからなく、チラシにでていたホームセンターの譲渡会に参加することにした。

譲渡会といっても、今とは違って、昔のことなので、かなりアバウトなものだった。

近所のホームセンターの屋外で行われていた。
まず、受付に行くと、譲渡したい猫の情報を書いた。
性別、種類、年齢、名前、連絡先という簡単なものだった。
ワクチンの有無、病気の有無等は、全く聞かれなかった。
ただ、男の子には青いリボン、女の子には赤いリボンが付けられる。

「いい人に巡り会えるといいですね。」と、受付のお姉さんは、微笑みながら、仮設テントの下の白い柵で囲まれた丸いサークルに案内してくれた。

「こちらに、猫ちゃん達を入れていただいて、お待ちください。帰られるようなら、連絡先にご連絡するので、大丈夫ですよ。」
と、親切に言ってくれた。

私とお父さん、お母さんは、顔を見合わせて、
「いえ、こちらで最後まで待たせていただきます。」と即答した。

お姉さんは、優しく微笑みながら、
「それでしたら、こちらから少し離れたあちらのテントで、お待ちください。そこから、猫ちゃんたちの様子も見れますしね。」と、私達に教えてくれた。

私達三人は、無言でうなずきながら、
キャリーケースから、ライちゃんとシルちゃんを出した。

「ライちゃん、シルちゃん、しばらく、このサークルの中でいてね。いい人がいたら、行っていいんだからね。」と、私は優しく抱き締めてサークルにそっと入れる。

お母さんも、お父さんも心配そうに2匹を見ている。

しばらく様子を見ていると、サークルの中で2匹は、静かに座っている。
戸惑っているようだが、鳴いたりもしない。

サークルには、既に、他の子猫が5匹入っていたが、他の子猫達とじゃれたりしないし、関心もないようだ。

パニックになっていないようなので、静かに、離れたテントに三人で移動する。

移動した先に私達がいるのが、分かっているようで、2匹は、あまり慌てていないようだ。

テントの中に設置されている椅子に座って、三人で大人しく様子を見ていた。

更に3匹の子猫が、サークルに入れられた。
全部で、10匹の子猫だ。

いろんな種類の子猫がいる。
ライちゃんとシルちゃんは、キジトラの雑種だが、ペルシャチンチラみたいな子猫もいる。

どの子猫もはしゃいだり、他の猫とじゃれたりしているが、うちの2匹は、ボ~っと座っている。

「なんか2匹とも、あまり動かないね。」と、心配そうに言うと、

「戸惑っているのかしらね。ほら、うちの子は、おっとりしてるから。」と、お母さんが答える。

お父さんも、
「うん、利口な証拠だ。」と、頷きながら言う。

しばらくして、猫を飼いたい人達がサークルにやってきた。

{来た!来た!誰にもらわれるんだろう?}と、ドキドキしながら見守る。

{それにしても、猫を連れてきた人が、私達以外、誰もこの場にいないのは、なぜなんだろう?}と、不思議に思いながら、様子を見続ける。

思ったより、多くの人が見に来てくれている。
中には見に来ているだけの人や触りたいだけの人もいるようだが、家族で探している人達もいる。

サークルの中の子猫達が、いっせいに、かわいいアピールを始める。
伸ばされた手にスリスリしたり、甘えたりしている。
みんな目一杯、{私、かわいいでしょう?}と独自のアピールを繰り出している。

{うちの子達はどうかな?}と、
ワクワクしながら見ると、

{!!!何故だ。さっきの位置から、ほとんど動かずにいる!!}

私が唖然と見ていると、
「ほら、お姉ちゃん。別にアピールしなくても、触ったりだっこしてもらえば、いいんだから。」とお母さんが、私の気持ちを察して言ってくれる。

「うん、そうだよね。」と、私は、気を取り直して見続ける。

多くの人が、サークルから、気に入った子猫を自由に出して、だっこしたり確認したりしている。

「この子、可愛いね。ほら、こんなに喜んでる。」とか

「こいつ、すっごくやんちゃで元気いいよ。」とか、

「見て!こんなに、もう僕に懐いてるよ。」とか
いろんなセリフがあちらこちらから聞こえてくる。

今のところ、ライちゃんもシルちゃんも、一触りもしてもらっていない。

「誰にも触られないね. ..」

お父さんとお母さんは、無言だ。

そうこうしているうちに、一匹一匹、もらわれていく。

サークルの中の子猫は、だんだん減っていく。

「どうして、触られないのかな?」

お父さんとお母さんは、さらに無言だ。

そのとき、一人の男の子が、シルちゃんをサークルから出して抱っこした。

野球帽をかぶった、元気な小学生くらいの男の子だ。
シルちゃんは、抱かれて大人しくしている。
その男の子は、シルちゃんを気に入ったようだ。

私達は、固唾を飲んで見守る。

「その子が、いいの?」と、お母さんらしい人が男の子に尋ねる。

男の子は頷いて、シルちゃんを優しく撫でている。

「やめなさいよ、そんな子。ほら、こっちの子のほうが可愛いし、元気がいいわ。」と、そのお母さんは、真っ白な子猫を男の子に差し出して、シルちゃんをサークルに無造作に戻す。

{何すんのよ。シルちゃんのほうが、よっぽど可愛いし、頭いいし、上品なのに。}と腹立たしく見ていると、

「がらの悪そうなおばはんね!あんな家族には、シルバーは、あげられないわ。」と、お母さんが、怒る。

「見る目のないおばんやな。シルバーには、合わないな。」と、
お父さんも怒って言う。

「そうよ。あの男の子には、シルちゃんのほうが、良かったと思うけど、あんなお母さんの家じゃダメね。」と、私も怒りながら言う。

結局、その男の子は、白い子猫を連れて帰った。

それから、いろんな人が見に来ては、触ったり、抱っこしたりしていったけれど、シルちゃんもライちゃんも、一触りもされなかった。

「ライちゃんは、今まで一回も触られてないね。」と、
私が悲しそうに言うと、

お父さんが、突然
「もういい!連れて帰るぞ。」と、言い出す。

「え?」と、私がお母さんと顔を見合わせていると、

「だから、2匹とも、家で飼っていいって言ってるんだ。ほら、早く連れてきてやれ。」と、お父さんが顔を背けながら言う。

私は、満面の笑顔で、
「うん!すぐに連れてくる!」と、
急いでサークルのほうに行く。

「ライ!シル!もう、いいよ。一緒におうちに帰ろう。」

ライちゃんとシルちゃんが、猛ダッシュで私の所に近寄ってきて、スリスリ甘える。

「ごめんね。嫌な思いさせちゃったね。」と、謝りながら優しく二匹を撫でる。

その間にお父さんとお母さんもこっちに来た。

「さあ、帰りましょう。」とお母さんが、キャリーケースを開けて促す。

「うん。」
2匹は、素直にキャリーケースに入る。

受付に行って、「連れて帰ります。」と言うと、

「一ヶ月に一回していますから。」と、お姉さんが気を遣って言ってくれる。

「いえ、この子達は、家で飼うことにしましたから。」と、お父さんが毅然と答える。

私とお母さんは、顔を見合わせて笑う。

帰りの車の中でお父さんが、
「ライサーは、可愛いのに触りもしないなんて、みんなどうかしてる。」と、ぶつぶつ文句を言っている。

{ふふふ、ライちゃんの顔を見て、仮面ライダーみたいだから、ライサーだって名付けたくせに。}

2匹とも飼えるようになって、私は、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。

弾んだ気持ちで、ライちゃんとシルちゃんと家に帰った。

ただ、ライちゃんとシルちゃんが帰ってくるのを見るなり、不機嫌になった猫が一匹いた。

ミュウだ。

ミュウは、ライとシルの姿を見るなり、「シャー!」と恐い顔で怒った。

多分、
{何、帰ってきてんのよ!鳥かごで待機して誰かにもらわれるのが、ルールでしょう。この卑怯者!}と、思っているのだろう。


P.S.
はなさん、ありがとう。だいぶ、元気になりました。

島猫さん、ブックマークに一方的に弱音を書いてごめんなさい。おかげで気持ちが楽になりました。