ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝のつぶやき-保険の憂うつ4

↑カテゴリー別のタイトルで、編集しました。【輝の行政書士試験】をクリックすると、ひかるの行政書士試験合格までの物語だけが、出ます。🐈







お昼過ぎに、おばあちゃんとおじいちゃんが、病室にやって来た。

おばあちゃんが、「よう頑張ったなあぁ、輝ちゃん。ほんまに、よう頑張った。ほんまに、この子は、いつも守ってもうてる子や。輝ちゃん、ほんまに良かったなぁ。」と涙ぐむ。
おじいちゃんが、嬉しそうに、うん、うん とうなづく。

おばあちゃんが、「そうや、輝ちゃん。頑張ったご褒美をせなあかんな。何がいい?」と楽しそうに尋ねる。
私は、ちょっと考えて
「おばあちゃん、また展示会に連れていってほしい。ナポレオンとジョゼフィーヌの装飾品の展示とか、ルノワールの時代の美術展みたいなの。」
と嬉しそうに答える。

おばあちゃんは、おじいちゃんと顔を見合わせて笑いながら、
「輝ちゃんは、そういうの見るの、ほんまに好きやなぁ。よっしゃ、元気になったら、見に行こうな。」
と嬉しそうに言う。

しばらくして、おばあちゃんとおじいちゃんは、安心して大阪に帰っていった。


夕方ぐらいになって、慌ただしく、試験場でアシスタントをしている夢美ちゃんが、病室に飛び込んできた。
「輝さん!輝さん!心配で、居ても立っても居られなくて、来ちゃいました。田嶋部長は、手術の翌日だから、早すぎるからダメだって言ったんですけど、輝さんの顔をみないと安心できなくて。」
とお花のアレンジメントとお菓子を私に見せる。
「試験場の花で、アレンジメント作ったんです。輝さん、お花、大好きでしょう。お菓子も大好きだし。」と嬉しそうに言う。

{ああ、ほんとに助かって良かった。
こんな無邪気な夢美ちゃんを悲しませるところだった。}
と、馬鹿な考えを持っていた自分を反省する。

「ありがとう、夢美ちゃん。綺麗なお花でいっぱい。一生懸命、作ってくれたのね。美味しそうなお菓子もいっぱい選んできてくれて。夢美ちゃんのおかげで、すぐに元気になりそうよ。」と笑いながら言う。

夢美ちゃんは、嬉しそうに帰っていった。

しばらくして、私の研究室の上司の田嶋部長が、慌ててやって来た。

「夢美君が、お見舞いにいって喜んでもらえたと自慢げに言うのを聞きましてな。まだ早いってあんなに言ったのに、まったく。しかし、私も、こうなったからには、負けている訳にはいきませんからな。急いで来ましたよ。」と誇らしげに言う。

{いや、部長。それは、なんかちょっと違うと思うんですけど...}
と心の中でつぶやく。

「私は、ゼリーとプリンの詰め合わせにしました。日持ちしますから、ゆっくりと少しずつ食べてくださいよ。」と微笑む。
「研究室のあとの連中は、花田くんが、復帰してきたときに、みんなでお祝い会をするから、お見舞いは控えるように言ってますからな。あんな野郎4人を病室に寄越せませんからな。」
と笑う。

「部長、お心遣いありがとうございます。」と一緒に笑う。

部長は、「じゃあ、楽しみに待ってますからな。」と嬉しそうに言って帰っていった。

私は、ほんとに幸せものだ。

次の日は、事務の真美ちゃんが、両手に重たそうな紙袋を抱えてやってきてくれた。
「輝さん!入院中は退屈だと思って、漫画をいっぱい持ってきました。これだけあったら、当分退屈しませんから、大丈夫ですよ。輝さんが好きそうなシリーズ揃えましたからね。今回は特別だから、お菓子食べながら読んで、汚しちゃっても許しますよ。」と笑いながら言う。

真美ちゃんは、しっかりもので、私の世話を普段からよくしてくれる。

真美ちゃんとは、会社が変わった今でも友達で、よく一緒に食べ放題やバーゲンに行く。


週末には、本社の常務も来てくれて「突然の病気は、びっくりするもんですよ。私も経験があるから、よく分かります。安心して、ゆっくり治してくださいよ。」と励ましてくれた。
本社の経理の相談役顧問まで、「会計関係の処理は私に任せなさい。一番多く戻してみせますよ。さすがベテランというところをお見せしますよ。」と私を安心させに来てくれた。


私には、こんなに大事に想ってくれる人がいる。


最悪の場合は、治療を放棄して、みんなに迷惑かけないように、そのまま逝ってしまおうなんて、馬鹿な決意をしていた自分を恥じる。

もう十分、今までも、みんなに迷惑かけ放題の甘え放題だったのに。

自分がいなくなることが、最大の迷惑だったことに気づく。


「花田さんは、優しいお見舞客さんが多くっていいわね。」
隣のベッドから声がする。
上野先生だ。


私の病室は、4人部屋だ。
私は、入り口側のベッドで、向かいのベッドには、鈴木のおばあさんが、窓側の、おばあさんの横のベッドには、奥村のおばさまが、私の横のベッドには、中学校の教師をしているという上野先生がいた。

「先生、お菓子好きですか?良かったら、お裾分け。」とみんなに、もらったお菓子を渡しに行く。

みんな喜んでくれる。

おばあさんが、「若いと傷も綺麗に縫ってもらえてええわなぁ」と言って、お腹を見せながら、「ほら、私のなんか、ホッチキスで簡単にパチンパチンってされたから、こんなんよ。」と笑う。
ほんとに、ホッチキスの跡が、結構間隔を開けてあって、雑だった。

奥村さんが、「そんなんいわんとき。花田さんは、まだまだ若いんやから」と笑う。

上野先生が、「傷なんかどうでもいいわ。早く退院したいわ」と言ったので、

そうですよねと言おうとしたら、
鈴木のおばあさんが、私に首を横に降るので、私は黙った。

奥村さんが、「まあ、そんなに慌てんと、ゆっくりしとき。」と宥める。


私は、手術前、末期ガンを想定されていたので、私の病室の3人は、みんな末期の人だった。

でも、私は、そのときは、まだ知らなかった。


🐈続く🐈