↑カテゴリー別のタイトルで、編集しました。【輝とココのこと】をクリックすると、ココの物語だけが、出ます。🐈
まだ、野性味あふれるココ
(次回から、やっと登場します。)
手術の翌日の今日は、金曜日。
1日会社に行けば、土日休みだから、頑張ろう。
本当は休んで、ずっと付き添っていたいのだが...
何も出来なくても、側に居て、様子を見ているだけで、安心するものなのだ。自己満足みたいなものだが....
「いや、ダメだ!ミル、ねねは、頑張るよ。だから、ミルも賢く頑張って、お留守番していてね。」と、ミルと自分に言い聞かせ、洗濯とミルの世話と用事を済ませて、出かける。
(注)私は、たまに自分のことを、“ ねね
” と呼ぶ。小さい頃から、お姉ちゃんと呼ばれていたからか、何故か、自分でも、よく分からない。
会社に行くと、西山所長も山さんも、みんな心配してくれていた。
西山所長は、お見舞い金までくれた。
1日中、心配しながら仕事をする。
というか仕事がたまっている。
私の仕事は、代わりに誰も出来ないので、休めば、たまる一方なのだ。
{代わりにしてもらっても、やり直しとクレームだらけで、倍以上、時間がかかることになる。何故だ?仕事なんか、誰がやっても変わらないと思うのだが...}
何とか定時に終わらせようと、(2日分の仕事を1日で終わらせるようなもの)昼休みも返上し、定時に帰るため、一心不乱に格闘した。
何とか終わらせて、フラフラしながら、定時に会社を出て、一目散に病院に向かう。
急いで病室に向かって、カーテンを開けると、そこには、苦しそうな母が、ベッドに仰向けで寝ていて、起き上がれないでいる。
「お母さん、それは...」と、絶句する。
「浅井先生が、ペースメーカーが浮き上がってこないようにって、砂袋を乗せているのよ!で、ずっと、この体勢で、なるべく起きないようにって、言うのよ!」と、母が、腹立たしく説明する。
砂袋は、かなり重そうだし、ずっと同じ体勢というのは、かなり、つらそうだ。
{砂袋...こんな原始的な方法が、今どき、まかり通っていいのだろうか。もっと、現代的なスタイルが、あるのでは...}と、不思議に思っていると、お母さんの食事と、薬を看護師さんが持ってきてくれたので、お礼を言って受け取る。
「まあ、前に福丸の社長が、腰の手術したときに、体を固定されて、動けなくて大変だったって、言ってたし、骨がくっつくより、お母さんのほうが、早いだろうから、我慢しなよ。」と、慰める。
ふと、横の机を見ると、手土産が置いてある。
「お母さん、誰か来たの?」と、不思議に思って聞くと、
「和広よ。急に2時くらいに一人で来たのよ。その小さな手土産だけ持って。」と、答える。
{弟が?やっぱり、ヤツなりに心配していたのか。一言言っといてくれたらいいのに。不器用なやつ。}
「それ、あげるわ。何なの?」
と言うので、開けてみると、ゼリーが六個だけ、入っていた。
スーパーの特売コーナーで売っている、500~600円くらいのものだな。
「ゼリーよ。冷蔵庫に入れとこうか?」
「ゼリー。相変わらず、ケチくさいわね。持って帰って。来ても、ほとんど喋らずに座ってて、30分くらいで帰ったわ。」と、ちょっと不満そうに言う。
{だから、センスがないと言うのだ。500円でも、お母さんの喜ぶものは、いくらでもあるのに。せっかく、来たんだから、何か気の利いたことでも、言って帰ればいいのに。全く不器用なんだから。損な役回りよのう。}
「お母さん、所長から見舞金もらったわ。このカバンに入れとくね。」
「あら、悪いわね。」と、お母さんの機嫌がなおる。
じゃあ、御飯にしましょうかね...
おっ!初めて見た。こんな晩ご飯。
おかずから何から何まで、串に刺さっている。御飯も小さいおにぎりだ。
「お母さん、この串刺し定食は?」と、びっくりして聞くと、
「だから、この体勢で、起き上がったらダメだから、寝たまま串から食べさせてもらっているのよ。」と、ウンザリして答える。
{なんと!そこまで、徹底しないといけないのか。もはや、拷問だな...}
という訳で、寝たままのお母さんに串から、御飯を食べさせてあげる。
なんだか、鳥の雛に、エサをあげているようで、ちょっと楽しいな。
四苦八苦して食べ終わって、病室にある洗面所で、熱いお湯でタオルをしぼって、顔やら手を拭いてあげる。
薬を飲ませて、歯を拭くテイッシュで、歯磨きさせて、さっぱり気持ちよくなったお母さんに、「じゃあ、明日は、昼前に来るね。」と、言って家に帰った。
家に帰って、いろいろ用事を済ませ、ミルとゆっくり戯れている。
今日は、金曜の夜なのだ。
「ミル~。お母さん、砂袋の刑に処せられてたよ。ミルは、賢くしてたから、ご褒美あげなくちゃね。」と、
ミルの好きな猫のお菓子をあげていると、家の電話が鳴る。
急いで出ると、おばあちゃんからだった。
「あ!輝ちゃん、お母さんの様子は、どない?そう、順調なんやね。良かった。おばあちゃん、やっぱり、来週じゃなくて、今週の日曜日に行くわ。お昼前に家の方に行くからね。」
やっぱり、おばあちゃんも心配で、いてもたってもいられなくなったんだ。
私は、大喜びで、二つ返事で了承する。
「ミル~。おばあちゃん、日曜日に来るって。ちょっとだけでいいから、サービスしてよね。」と、頼むと、
「ミャア」と、短く答える。
土曜日の朝早く起きて、ミルに御飯をあげて、洗濯と掃除を始める。
一階のほうは、お母さんの担当で、いつもしないのだが、今日は、させてもらおう。
ハタキではたいて...
うわぁ、なんじゃこれ!
厚い層の綿ボコリが、舞い落ちてくる。
「ミル!はしゃいでないで、目を痛めるから、違う部屋に行ってなさい!」
お母さんは、掃除が苦手だ。
どちらかと言えば、料理もあまり...
レパートリーが少ない。
お母さんの分担の一階の大量のホコリをはたき落とし、掃除機をかける。
{こんな部屋にいたら、違う病気になるわ...}
これだけで、1日の労力が失われたような気分になる。
結構、フラフラになって、お昼前に病院に行く。
「あ、お母さん!砂袋、しなくて良くなったの?」と、聞くと、
「そう。やっと、さっき、看護師さんが、砂袋取ってくれたんだけど、代わりに、きつく巻かれているのよ。」と、
ブスっとして答える。
「まあ、重たいもの無くなったし、起き上がれるようになって、良かったじゃない。そうそう、明日、おばあちゃん達、来てくれるって。」と、微笑みながら言う。
「おばあちゃんが!おばあちゃん、足痛いんだから、別に来なくてもいいのに。」と、嬉しそうに言う。
「洗濯物は、これだけ?五階に洗濯機と乾燥機あったよね。やってくる。」と、洗濯物を袋に入れて出ていこうとすると、
「あ、お母さんも行くわ。退屈だし。」と、一緒に付いてくる。
歩けるくらい、もう元気なんだ。
本当に良かった。
その日は、一旦帰って、また、晩御飯前に病院に行った。
「ここの病食、うさぎのエサみたい。白菜ばっかりよ。お金ないんじゃない。」と、文句言うぐらい、さらに元気になっていた。
とりあえず、順調に回復しているし、元気そうで安心した。
明日は、おばあちゃん達も来てくるし、本当に良かった。
🐈続く🐈