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その猫は、嬉しそうに私の足にスリスリして、エメラルドグリーンのアーモンド形の目で、私を見上げて、裏口に誘導する。
{さあ、家の中に入りましょう。}
「いや、ダメだよ。ミルが、いるし、お母さんが、入院中だから、無理だよ。ごめんね。」と、頭を撫でて、玄関の方に向かって、家の中に入ろうと逃げる。
その猫は、先回りして、
{こちらのドアからでしたか。では、こちらから入りましょうか。}と、嬉しそうに私を見上げて、誘導する。
「だから、ダメなんだってば!ゴメン!」と、その猫を置いて、急いで家の中に入る。
胸が痛い...でも、ミルがいるし、これ以上は、無理だ。ごめんよ。
応接間の窓の網戸をガタガタする音がする。窓の外のエアコンの室外機に乗って、その猫が、二本足で立って、
{入れてよ~。なんで?決まっていることでしょう?}と、網戸をガタガタ言わせている。
窓の内側のソファに乗って、ミルも二本足で、網戸にへばりついて、
{どうしたの?どうしたの?}と、その猫と、やりとりしている。
「ミル、ダメよ。だいたい、あなた、他の猫と上手くやっていけないでしょう。やっと、家の中で落ち着けるようになったばかりじゃないの。」と、窓を静かに閉める。
静かになった。
良かった。諦めてくれたかな。
隣の和室の外の縁側から、網戸をガタガタする音がする。
えっ!そっちから!
{なんで?その猫は、入っているじゃない?早く、入れてよ。}と抗議する。
ミルが、急いで移動して、また応答する。
{どうしたの?どうしたの?}
「お願い、諦めて。ほんとに、ごめん。ミルも止めなさい。」と、また、静かに窓を閉める。
しばらく、罪悪感から外が見れない。
2階に上がって、じっとしていた。
{なんで、好奇心から見に行ってしまったのだろう。}と、深く反省する。
6時くらいになって、おそるおそる家の外を見に行くと、その猫は、いなくなっていた。
ホッと安心して、家の中に戻った。
良かった。いつもの場所に帰って行ったのだろう。
ちゃんと、帰る場所が、あるんだ。
安心して、晩御飯を食べ、お風呂に入って、ミルとゆっくりして、眠った。
【エメラルドグリーンの
アーモンドアイ】
それだけが、強烈に印象に残った。
懐かしい感じがするのは、何故なんだろう。
ああ、胸が痛い...なんだか、切ない。
朝5時に目覚ましが鳴って、布団から手を伸ばして止める。
その手に、いつものように、ミルがスリスリしにきて、{おはよう}と、挨拶してくれる。
ミルに「おはよう。いい子ね。」と、言って、頭を撫でて起き上がり、ミルの御飯の用意をしようと、階段を降りようとすると、ミルが急いで階段を降りて、正面のミシン台にジャンプして登り、{窓を開けて!}とせがむ。
窓を開けると、そこは、駐車場で、私の車が停めてある。
ミルのご要望通りに、窓を開けてあげると、車の横、窓の下に、あの猫が座って、窓を見上げている。
{おはようございます。}
と、嬉しそうに見上げて、挨拶する。
全然、諦めてなかった...
カリカリの袋とナイロン袋を持って、外に出て、ナイロン袋を置いて、その上に、カリカリをいっぱい置いてあげる。
その猫は、よほど、お腹がすいていたのだろう。
大量に食べた。
{こんなに一気に食べて、大丈夫なのだろうか。}と、ちょっと不安になるが、満足するまであげた。
その光景をミルが窓から、ずっと見ている。
「じゃあ、私、会社だからね。」と、頭を撫でて家に中に戻る。
急いで、洗濯とミルの世話と、用事を済ませて、会社に向かう。
その時には、その猫は、もういなかった。
会社が終わって、急いで病院に向かう。補充のお茶やジュースを売店で買い、病室に行って、お母さんが、晩御飯を食べ終わるのを見ながら、調子を聞く。
「浅井先生が、ちゃんと傷跡が治らないと退院させないって言うから、退院は、来週になるかもしれないわ。なんか、ごだわる人なのよ。」と、お母さんが、不満そうに言う。
「先生は、慎重なんだね。まあ、ゆっくりしててよ。」と、うわの空で答える。
洗面所の熱いお湯でしぼったタオルを手渡して、体を拭かしてあげて、洗濯物を袋に入れて、「じゃあ、また明日ね。」と、病院をあとにする。
スーパーで、晩御飯を買って、家に帰る。
駐車場の門を開けると、あの猫が待っている。
{遅かったですね。お帰りなさい。}
と、嬉しそうに出迎える。
車を駐車場に停めて、急いで家に入り、近づいてくるミルに、
「ちょっとだけ、待っててね。」と頭を撫でて宥めて、急いで、また、カリカリとナイロン袋を持って、外に出る。
カリカリを頬張っているその猫の頭を撫でる。
額に傷が出来ている。
{縄張り争いで、けがしたのかな。かわいそうに。喧嘩、弱そうだし。}と、さらに優しく撫でてあげる。
「ゆっくり、いっぱい食べててね。」と言って、家の中に入る。
ミルが、
{何してたの?なんか、おかしくない?}と浮気してきた彼氏を責める彼女のように、怪しんで抗議するので、
頭を撫でて、宥めて御飯をあげた。
用事を済ませて、外に出ると、もう、その猫は、いなかった。
布団に入って{あの猫は、男の子なのかな?男の子だったらいいな。女の子だと大変だろう。もう、6月で、暑くなってくるから、ノミとか出たら可哀想だな。ミルのノミダニのスポット薬が、余分にあるから、しといてあげたほうが、いいかも.. .ナイロン袋じゃなくて、お皿にしようかな... }と、いろいろ考えながら、眠りについた。
翌朝、また、目覚ましで目覚めると、
同じように、ミルが窓を開けてとせがむ。
同じように窓の外に、あの猫が、待ってる。
{おはようございます。}と、嬉しそうに見上げて、挨拶する。
これは、昔の落語家の弟子入りのときの光景なのだろうか...
師匠に、「弟子にしてください。してくれるまで、ここから動きませんから。」と言う感じの...
なかなか、根性があって、辛抱強そうな猫だ。
同じように、カリカリとお皿、それにノミダニのスポット薬を持って、急いで外に行く。
スポット薬を付けようとすると、嫌がらずに、ゴロゴロ喉を鳴らしながら、スリスリして、付けさせてくれる。
尻尾をそっと上に上げて確かめる。
う~ん、女の子だ。
彼女に、いつものように、大量にカリカリをあげて、家に入る。
会社を終わらせて、病院から戻って来ても、昨日と全く同じだった。
彼女は、もう決めているらしい。
というか、彼女にとっては、初めから決まっていたらしい。
彼女は、全く、揺るがない。
う~ん、これは、ちゃんと考えないとダメだな...
彼女に、何か道をつけないと...
🐈続く🐈