ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の会社の人 -キツツキさん1

↑カテゴリー別のタイトルで、編集しました。【輝の4番目の会社のこと】をクリックすると、4番目の会社の話だけが、出ます。🐈







~キツツキさんへ エールを込めて~

私が、4番目の会社、株式会社 ハレルヤに入社したとき、西山所長の他に、佐久間さんという営業さんがいた。

佐久間さんは、私と同じくらいの年齢で、会社の人達が言うには、美形男子らしかった。
インド系の濃い感じの美男子らしい。
まつげが長くて、細長の目で、美人系ともいうらしい。

らしいと私が言うのは、私は、ちょっと人と美的感覚が違うみたいで、佐久間さんに、あまり美を感じなかったからだ。敢えていえば、普通?って感じだった。とにかく芸術的なものを感じなかった。
でも、会社の人達は、「綺麗よね~」
って、みんな言っていた。

佐久間さんは、西山所長に頼まれて、仕事の合間に、私に商品知識や営業のノウハウや利益の取り方等を教育してくれていた。

佐久間さんは、教え方が上手で、覚え方のコツまでも教えてくれたので、すぐに、私は、いろんなことを覚えていった。

ただ、私の覚え方と考え方が、佐久間さんには、ちょっと変わって見えたらしく、
「は~ん。まあ、それでもいいけど。」と、よく、鼻で笑っていた。

佐久間さんは、西山所長のことを、よくバカにしていた。
「あんなのが、所長なんだから、やってらんねぇよ。俺が全部、結局しなくちゃなんないんだぜ。」と、よく私に言っていた。
確かに、佐久間さんの言う気持ちも、よく理解できたのだが、西山所長のように、お客様に怒鳴られたり、命令されて、へいこらしたり、理不尽なことを言われても、怒らずに宥めるように話しをするようなことは、私には出来ないと思った。

でも、佐久間さんは、私には、よくフォローもしてくれたし、体調のことも気にかけてくれていた。
なんやかんやで結局は、口が悪いだけで、憎めない、いい人だった。

ただ、一つのことに、すぐに噛みついて、怒涛のごとく、いっぱい意見を言ってくるので、私は、友達やお母さんに、佐久間さんのことを、「会社にキツツキさんがいる。」と言っていた。

キツツキさんは、私に、
「は~ん。お手並み拝見と行こうか。」と言って、私のすることを、よく面白がって見ていた。

キツツキさんは、上昇志向も強かった。
「なあ、金持ちの女友達がいたら、紹介してくれよ。社長の娘とか。俺、逆玉を狙ってるからさ。」と、よく言っていた。
夢は、金持ちになることらしかった。

なかなか正直者だけれど、彼には、当然、そんな友達を紹介する訳にはいかなかった。

半年くらいして、本社から、営業本部長の米山さんが、やってきた。
米山本部長は、キツツキさんを応接室に連れていって、何か長いこと話し合っていた。

応接室のドアが開いて、米山本部長が、私に「やあ、花ちゃん。佐久間君は、来月から本社に行くことになったから。佐久間君は、優秀だから、本社に必要でな。引き抜きだ。すまんな。」と笑いながら言う。

佐久間さんは、上機嫌で笑っている。

私は、「はい。」と微笑んで答える。

西山所長が、慌てて、「本社へって、どこの部署なんですか?代わりの者は、来るんですか?」と心配して本部長に聞いてくる。

本部長は、今度は、所長と応接室に消えていく。

佐久間さんは、「悪いね。優秀なやつは、ほっとけないみたいでね。まあ、本社に行っても、何でも聞いてくれていいから。」とかなり上機嫌だ。

「佐久間さん、優秀だから。良かったですね。」と私は、微笑む。


あとで西山所長から、「本社の営業が突然辞めて、人手が足りないから、仕事に詳しい佐久間君をうちから引き抜いたらしいわ。佐久間君の代わりに、本社の一番のベテラン業務の来栖さんが来てくれるらしい。」と教えてもらった。


来栖さんは、人のいい、ちょっと小太りのおじさまだった。
業務のこと、仕事のこと、何でも知っていて、いろいろ詳しく教えてくれた。
仕事の裏技も教えてくれたし、こっそり訂正出来るやり方とか、誰に頼めばいいとか、ためになることを、てんこ盛り教えてくれた。
仕事のことだけじゃなくて、会社内のことも教えてくれた。
「うちの会社には、大きく分けて2つの派閥があるよ。またそこから、いろんな派閥に分かれている。いろいろ、ややこしいんだ。別に、派閥を知る必要はないし、逆に絶対に、どの派閥にも属してはいけないよ。」とも教えてくれた。

うちの会社は、先代が創立して大きくした会社だ。その先代が、証券会社にいた今の会長をヘッドハンティングして、会長がさらに現代風に会社を大きくした。そして今の社長は、会長の息子になる。先代は、子どもが、いなかったらしく、養女をもらったらしい。その養女の旦那さんが、会社の取締役にいて、その取締役の妹さんと、来栖さんは、結婚しているらしい。
なんか、いろいろ複雑だ...

来栖さんは、念のため、気をつけるようにと、会社の伊達男と言われている営業さんと、つるんでいる仲間の営業さん達も教えてくれた。

とにかく、来栖さんは、会社の生き字引みたいな人だった。

来栖さんは、力持ちで、力仕事は、全部してくれるし、優しくて、いつも、おやつを買ってきてくれて、いろんなことを話しながら、一緒に食べた。

とても楽しかったし、来栖さんも、この営業所を気に入ってくれて、もう本社に帰らずに、ずっとここでいいって言ってくれていた。


3ヶ月くらい過ぎて、突然、米山本部長が会長と一緒に事務所にやってきた。

米山本部長が、「花田さん、おはよう。こちらは、田所会長です。今日は、会長から、少しお話しがあります。」と畏まって言う。

私は、きょとんとしながら、
「おはようございます。」
と、急いでカウンターに駆け寄る。

会長が、「おはよう、花田さん。うちの来栖と楽しく仕事をしているのに、悪いんだけどね、来栖を本社に戻させてもらいたいんだ。来栖が、いないと情けないことに、本社が回らないらしくってね。」と言って、本部長を睨む。

来栖さんをみると、私に面目無さそうな顔をしている。

会長が、続けて、「来栖がいなくなると、寂しいかい?」と聞くので

「はい。」と私は、素直に答える。

「来栖、光栄なことだな。こんなお嬢さんに、そんな風に思ってもらえて。」と会長が、来栖さんを睨む。

米山本部長が、「全くです。」と言って笑う。

「お嬢さん、本当に申し訳ない。でも、会社のためだ。すまない。来栖は、戻させてもらう。」
と会長が頭を下げる。

私は、慌てて「とんでもないです。会長、私こそ、来栖さんを一人占めしていた形になっていたみたいで、気づかずに申し訳ありませんでした。大丈夫です。来栖さんには、もう十分教えていただきましたから。」と言う。


来栖さんは、本社に戻っていった。

そのあと、営業さんを地元採用したが、やっぱり暫くして、本社に転勤になった。
その営業さんが、本社に引き抜かれる際に、西山所長が、どうしたものかと私に相談していた。

そのときに、私は、「彼は、まだ若いですし、まだまだ、いろんなことを経験したほうがいいと思います。それに、もう、私一人で、いけそうです。」と所長に答えた。

実は、本社に行った来栖さんから、その若い営業さんは、何年経っても営業が出来ないから、すぐに、こっちに寄越しなさいと、先にアドバイスされていた。
私自身も、その子が、仕事でミスしたときに、嘘をついて、仕入先のせいにしていたことが、引っ掛かっていた。


それ以来、この営業所は、西山所長と私の2人だけで、やっていくことになる。

私は、2人になるので、出来るだけ仕事の無駄を省いた。
西山所長は、何でも私の好きにさせてくれた。

在庫は、利益のない細々したものは置かず、緊急時にすぐに必要なもの、常時出るものだけを置くことにした。
運賃が、高くかかるものは、極力メーカーからの直送に変えた。
逆に品薄で売れそうなものは、安い内に大量に仕入れ、世間が高値になったときに、世間の安値で売るようにした。
見積り、発注、技術相談等それに勿論、経理業務も机に座って出来ることは、全て私がし、西山所長には、現場や大型物件を取りに行ってもらった。


そうこうしているうちに、今では、この事務所は、全社で一番小さいけれど、一番利益率が高い事務所になった。



🐈続く🐈