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おなかポンポコリンで眠れるようになったミル
3人で、絶句していると、ミルが、 “ ミャア ” と小さい声で鳴いて、私のほうに近づいてくる。
我に返って、ミルの頭を撫でて、そっと抱き寄せる。
{途方にくれている場合じゃない。考えなきゃ。真剣に本気で考えろ!}と、自分を鼓舞する。
院長先生も、我に返って、
「つまり、点滴で、体力の回復を待って治療をする(1)か、血液検査をして、必要ならば、輸血も行って回復を待つ(2)か、手術して開腹する(3)かになるんですが、どうしますか?」と静かに、真剣な顔で聞く。
{えっ?その究極の三択を、私がするの?医者のあなたじゃなく、私が?}
一瞬、腹がたつ。
いや、逆にミルの命をこいつに決めさせられるか!と気を取り直す。
{真剣に考えろ。ミルの命がかかっている。慌てるな。考えろ。}
{まず、(1)の点滴は、論外だ。時間がない。(2)も同じだ。チンタラしている間に手遅れになる。だとすれば、残るのは、(3)なのだが. ...}
「手術の場合は、麻酔は、どうなります?」と、聞いてみる。
「全身麻酔になります。麻酔も危険が伴います。そのまま、眠りから覚めない場合もあります。」と、院長が答えると、横に座っていたお母さんが、
「そんな!じゃあ、どうすればいいんです。」と、院長にわめき出す。
院長とお母さんが、騒がしく、やりとりしている間に、考え続ける。
{全身麻酔は、手術が成功したとしても、体力を大幅に奪われるので、回復は、難しいだろう。すると、3つとも全部却下だ。じゃあ、どうすれば....}
{ん?待てよ。何故、私は、最初から胃腸に何か詰まっているという説に、ずっと、違和感を感じているんだ。}
{...........!!}
{急に考えがまとまって、全ての点が
繋がった。}
2人が、言い争っているところに、
「先生、ミルは、ずっと毎日、健康な便をしています。何か詰まっていたら、そんなことは、あり得ないんじゃないですか?」と割って入る。
「それに、下痢もしていないんですから、そんな大病にかかっているとは、思えません。他に、何かないですか?何かあるはずです。何か。」と真剣に
院長の目を見て、訴える。
お母さんが、「そうよ!ミルは、毎日、いいウンコしてるわ!」と、勝ち誇ったように、院長に言う。
院長先生が、「え?毎日、便が、ちゃんと出ている。じゃあ、違うな。じゃあ、原因は、何なんだ?」と、頭を抱えて、真剣に考え込む。
しばらく、考え込んで、はっ!と思い出したように、顔を上げて、
「前の病院で勤めているときに、変わった症例を見たことがあります。胃の中に、大量の寄生虫が、いたんです。」と静かに話す。
{それだ!間違いない。}
直感がおりて、確信する。
私は、「先生、前の病院の先生が、ミルには、虫がいると言っていました。間違いないです。」と訴える。
先生が、「確かにそうかも。この治療で、始めていいですか?」と私に尋ねる。
私は「ええ!この治療で、すぐに始めてください。」と、はっきり答える。
そこで、先生が、急にためらう。
「先生、どうしました?」と、心配して聞くと、
「虫にも種類があって、強いものは、薬も強くなるので、この子の体力が耐えられるか心配です。弱い薬でさえ..」と、弱々しく答える。
「いえ、打ってください。体力は、落ちていく一方です。早くしないと、それこそ、この子が限界になります。」と、私は、きっぱり言う。
「しかし..」と、先生は、躊躇する。
「いいから、早く打ってください!飼い主の私が、いいって言っているんです。さあ、早く!」と、促す。
{ミルの命は、私が決める。私は、私の直感と、ミルの生命力を信じる。}
先生は、意を決して、
「分かりました。では、まず、一般的な虫全般に効く軽いほうの薬で、様子を見ましょう。それで、金曜日に、この子の便を持ってきてもらって、調べてから、虫を特定して、違う薬を打ちましょう。」と、私に提案する。
私は、承諾する。
先生は、奥に行って薬の用意をして、戻ってくる。
心配した山崎さんも、一緒についてくる。
先生は、もう一度、ミルの体重を計って、慎重に薬の量を決める。
私と山崎さんが、ミルを優しくおさえる。
先生が、私に目で合図する。
私は、しっかりと頷く。
先生が、ミルに、ゆっくりと注射する。
しばらく、4人で、固唾を呑んで、ミルの様子を見守る。
今のところ、異変は無いようだ。
ひとまず安心して、先生と山崎さんに、お礼を言って、診察室を出る。
待合室には、もう誰もいない。
藤堂先生が、ミルの診察の間、他の子たちを全部診てくれていたようだ。
会計を済ませて病院を出ると、時間は、もう8時半を過ぎていた。1時間近くも、やりとりしていたことになる。
とりあえず、出来ることは、今のところ全てやった。
今日は帰って、ミルをゆっくり休ませよう。
なるべく、体力を回復させよう。
あとは、金曜日だ。
🐈続く🐈