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ちなみに、香港の慰安旅行は、西山所長は欠席していた。
この旅行の前のバンコクの慰安旅行で、帰りの飛行機で、体調が悪くなって倒れて、大騒ぎになったからだ。
バンコクの慰安旅行は、私は用事があって、行かなかったのだが、どうも水が良くなかったのか、帰ってから体調を崩す社員が続出した。
西山所長も、もれなく体調を大いに崩し、一週間使いものにならなかった。
そういったわけで、この香港旅行は、1人で関空に行って、1人で関空から帰ってきた。
私の仕事は、基本、他の部署と全く関わらない。
1人で、全てをする。
だから、たまに他の部署に電話をするくらいで、会うこともない。
だから、私の顔を知らない人は多い。
私も、関空に着いても、知らない顔ばかりだ。
飛行機の中で、もらったチケットの席を探して、座ろうとすると、アジア系のおばさまが、英語で私に、
「この席は、どこになるの?」と、
聞いてきたので、案内してから自分の席に座った。
そのやり取りをみていたからか、隣の若い兄ちゃん{多分、うちの会社のエンジニア部門の新人だ。エンジニア部門の連中が、周りに座っている。}が、英語で何を思ったのか、
「観光ですか?」と私に聞いてきた。
{おい!同じ会社だよ。ていうか、何故、私を外国人だと思っている。}
「まあ、観光みたいなものね。」と、私は、日本語で答える。
しばらくしてやっと分かったらしく、
「もしかして、同じ会社の方ですか?」と、嬉しそうにいっぱい話しかけてきた。
{おい!隣のエンジのおっさん。無料の機内サービスのワインばっか飲んでないで、部下の面倒みろよ。}
「僕、エンジニア部に今年入ったばかりで、海外に行くの初めてなんです。」
と、子犬のように、目をキラキラさせて、私に訴える。
{そんな顔されたら、ほっとけないな。}と、入国カードの書き方やら、機内食のセッティングやら、映画の見方やら、いろいろ教えて助けた。
さすが、香港行きの飛行機、映画の字幕が、英語で話して、字幕が中国語になっている。
字幕に漢字ばかりが流れる。
隣の若い子と顔を見合わせて、思わず笑った。
教えるのも落ちついたから、英語兼中国語の映画を見ることにした。
【僕のワンダフル・ライフ】だ。
見ていくうちに、なかなか慣れるものだ。
中国語の翻訳が、たまに、
{それは、ちょっと、おかしいんじゃない?}とツッコミどころ満載になるが、映画に集中してきた。
犬が亡くなるシーンで、思わず涙を流してしまう。
隣の子が、ビックリして私を見ていた。
まあ、こんな感じでスタートした香港旅行は、3泊4日なのだが、この後、事件満載の旅行になることになる。
この香港旅行の話は、また、別の物語で、詳しく書くことにしよう。
全社員合同の夕食パーティーで、社員が、こぞって社長夫婦への挨拶に列をなしてくる円卓から離れ、他の営業所の事務の女の子2人と、本社の事務の女の子1人と、谷川部長と話をしていて、谷川部長が、ふと思い出して、恐い話をし始める。
谷川部長が、若い頃、地方の営業所で、支店長に赴任したばかりの頃の話だった。
「俺が、支店長になったばかりで、その時に営業所にいた若い営業の男の子が、急に無断欠勤をしたんだ。電話しても出ないし、心配でアパートにも見に行ったんだけど、留守だったんだ。」
「それで、次の日も無断欠勤してたんだが、警察から連絡が入ったんだ。」
私たち4人は、息を呑んで聞いていた。
「近くの丘の見える大きな公園で、自殺してたんだ。」
「えっ!」と、私は、大きな声をあげて、びっくりする。
「それは、仕事か何かが原因ですか?」と、他の女の子が聞く。
「いや、後で分かったんだが、どうも失恋が原因らしかったんだ。」
{え~失恋で?よっぽど好きだったのかな。私には分からない感情だ...}
「それでさ、葬式には、上の連中が、<おまえが、1人で行ってこい。>って指示でさ、俺、支店長になったばかりなのにさ、1人で行ったんだけどさ。」
「ほら、親戚の人達とか、葬式に来ている人達は、会社のせいで自殺したって思い込んでるみたいで、俺を見る目が、冷たいわ、憎しみに満ち溢れてるわで、凄かったんだよね。なかなか忘れられない事件でね。」と、告白する。
「え~!大変な事件じゃないですか!そりゃ、忘れられませんよ。大変でしたね。上の人も一緒に行ってくれたらいいのに。」と、私は谷川部長を慰める。
告白した谷川部長は、肩の荷が降りたかように、すっきりして、笑顔で離れていった。
他のみんなは、また、挨拶まわりに行ったが、私は、ちょっとぼ~っとしていた。
私は、よく人から、いろんなことを告白される。
もっと、びっくりすることや、想像もつかない話をよく、打ち明けられる。
{何か飲んで一息つこう。}と、
飲みものが並んでいるテーブルから、炭酸水の瓶を一本もって、歩きだしたところで、女の人が声をかけてくる。
「あら?あなたとは、本当によく出会うわね。縁があるのかしらね。」と、笑顔で言う。
続けて、「その炭酸水は、どこにあるの?私もいただきたいわ。」と、尋ねるので、
「あ、こちらです。」と、案内して、笑顔で挨拶して、その場を離れる。
その女の人は、関空の集合場所でも、私に「初めまして、山口商事の深川です。」と話しかけてきてくれて、ずっと、いろんな話をしていた。
1日目の夕食会のときも、出会って、
「明日は、どこに行くの?」と、話をしていたし、次の日もだ。
山口商事株式会社は、最近、社長が子会社になさった会社だ。
山口商事の社長が、高齢で跡継ぎが無く、従業員を辞めさせる訳にも行かず、うちの社長が、跡を引き受けたということだ。
なかなか感じのいい、優しい女の方で、会う度に気さくに話してくれた。
🐈続く🐈