ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝の営業所の変化6~4番目の会社のこと

↑カテゴリー別のタイトルで編集しています。【輝とココのこと】【輝の4番目の会社のこと】をクリックすると、ココの話だけ、4番目の会社の話だけが見れます。🐈

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↑ココですよ💞

{え!ビルに移転?なんで、そんな話に?}

「倉庫もなくして、スタイリッシュな駅に近いテナントを借りて。いつまでも、昔のスタイルというわけには、いかないんですよ。だいたい、そんなスタイルをしている営業所は、ここともう一ヶ所だけです。」

{え?冬野本部長?なんで急にそんな
に変わっちゃったの?}

私は、席を立って、オズオズと2人の方に近づいていく。

「あの~、倉庫をなくしちゃったら、お客さん、離れていっちゃわないですかね?」

私は、恐る恐る意見してみる。

「倉庫を利用している客は、売上の大きい客ですか?そんなにいるんですか?」

冬野本部長は、ふん!って感じで、西山所長に質問する。

「いや、小さい客ばかりです。一件、少し大きい客もいますが..」と、所長が小さい声で答える。

{え!小さい客は、見捨てろってこと?}

「でも、周りに競合がいますし、倉庫が無いとうちの有利なところが 無くなるんじゃ?」と、私は食い下がる。

「本社ではね、もう、運搬も業者に任すようになってね。極力在庫も置かなくしてるんだよ。社員が車で事故したりするリスクをおかしたくないんだ。だいたい、車通勤も例外なんだよ。駅に近くなったら、電車で通えるから安心だしね。花田さんは、家はどこらへんなの?」

「家?どこって..えっと、あっちの方向にず~っとず~っと行ったところにある田舎の子です。」と、私は、遠くの方を指差しながら答える。

「え?花田さんは、市内に住んでると思ってた。だから、この話もいいと思ったんだけど...」
本部長は、何故か戸惑う。

私は、何故か、いつも、市内に独り暮らしをしていると勘違いされることが多い。

「この子は、俺と同じくらい遠方の子でやで。」と、所長が説明する。

「私は、田舎の子だから、そんな都会の人みたいに、電車通勤なんて無理です。だいたい、足も萎え萎えだし..」と、私は冗談ぽく答える。

{だいたい、電車通勤だと困る。帰りに買い物に寄れないし。雨の日は、買い物をしてきてあげたい。それに、お母さんに何かあったときに、すぐに行ってあげられないから不安だし、車じゃないと不便だ。}

私は、心配でいっぱいになってくる。

「それは、花田さんのわがままだよ。」本部長がポツリと言う。

{はぁ?💢私が、わがまま?}

プツンと、私の中の何かが切れた。

「都会と田舎じゃ、状況が違いますよ。こっちは、電車の本数も違いますしね。昼間なんか下手したら、一時間に一本しかないんですよ。」

「本社じゃ、2時間かけて来てる人もいるんだよ。花田さんは、そんなにかかからないでしょう?」

{はぁ?2時間かけてくる奴は、好きで来てるんだろうが?バカなんか、そいつは?通勤で往復4時間?違う会社に転職しろよ。都会なんだから、いくらでも、会社あるだろうが。私なら、転職するわ!}

「都会と田舎は、違いますよ。」私は、反論する。

「いや、都会とか田舎とかは、関係ないよ!」

「都会と田舎は、違いますよ!」

「本社では、一時間以上かけて来てる人も多いんだよ。小山部長だって、そうだし。だいたい、通勤中に事故したら、会社の責任になるんだよ。」

{はあ?会社に別に責任とってもらわなくっても、自動車保険入ってるし!だいたい、会社に何かしてもらったことないけど?小山部長も、別にそんなこと私に言ったことないし!}

「こんな田舎で電車通勤なんて、大企業みた~い。」
私は、ふん!って感じで挑発する。

冬野本部長は、意外と怒らずに、黙って、私を優しい目で見つめている。

「分かりました。もう、分かりましたから。会社で決まっていることなら、それでいいです。ハレルヤは、そうなんでしょう。理解しましたから、大丈夫です。」私は、引き下がる。

「いや!そうじゃなくて!社長は、社員をみんな平等にしたいって考えで。社員は、平等に..」

{はあ?社員をみんな平等に?無理言うなよ。それぞれ、みんな事情が違うだろうが!}

「平等って、何なんですか!」
私は、反論する。

「だから、平等..」
本部長が、更に続けようとしたところで、

「まあまあ、話がずれていってる。そろそろ、話を本線に戻しましょうや。」と、所長が仲裁に入る。

「そうですね。」私は、素直に引き下がる。

「いや、でも...」
本部長は、まだまだ、口論を続けたいようだが、しぶしぶ止める。

ようやく、話が本筋に戻っていく。
私の怒りはおさまらないので、2人が椅子に座っている真ん中に仁王立ちしたまま、話を聞いている。

「だから、先のことを考えたら、そのほうがいいよ。」冬野本部長が所長に説得を続け、

「そうですね。俺みたいに古いやり方は、もう..」と、所長が納得し、

「そうですよ。現場に行って、そんな俺達みたいな営業のやり方は、もう..」冬野本部長が続けているところに、

「そうね!そのほうがいいかもね!」
私が、怒りを爆発する。

「所長がいる間は、倉庫に入荷して、トラックで現場に持っていって、そんなやり方でいけるけど、新しく来る福山さんは、そんなこと出来るの?」

「いえ、福山は、無理です。そんなスタイルの営業所にいなかったし。」
本部長が、大人しく答える。

「じゃあ、新しいスタイルに変えたほうが、いいんじゃない。そうね、先のことを考えたら、そのほうが、いいかもね!」

「私も、倉庫が無くなれば、重たいものを運んだり、入荷に手こずったりしなくて済むしね!」

{私だって、好き好んでやってるわけじゃないわ!会社のためにみんなのために頑張ってきたんじゃない。}

「そうね。私も段々、年を取ってくるしね。もう、限界かもね!」

本部長が立ち上がり、私を正面から見下ろす。

本部長は、私より、ずっと背が高い。

{何よ。怒る気?負けないんだから。}

私は、本部長を見上げて、本部長の目を見る。

本部長も、私の目を見ながら、
「もう、そんなことしなくていいよ。必要な小さいものだけを置くようにして、そうしよう。」と、優しい声で言う。

私は、本部長の目を見続けながら、
「そうね!そうしたら、こんな制服じゃなくて、綺麗な普通の服も着れるかもね。」と、最後の抵抗をする。

本部長も、私の目を見続けながら、
「そのほうが、先には、絶対にいいよ。」と、優しく言う。

私は、少し、目を反らす。
そして、もう一度、本部長の目を探るように見る。

本部長は、私を見つめたままだ。
本部長の目は、穏やかで優しさに溢れている。

{ふ~。降参だ..}

私は、諦めて自分の席に戻り、しょんぼりと静かに座る。

本部長と所長の会話は、続いていく。