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西山所長と冬野本部長の話は、進んでいく。
「急にではなく、徐々に変えていきましょう。まず、トラックを無くす方向で..」
冬野本部長が、説明を続けていっている。
私は、その間、しょんぼりして、自分の席に座っている。
心配でいっぱいだ。
悲しい。
いろんな感情が入り交じっているが、変化は受け入れなければいけない。
次に進まなければいけない。
どうしよう。
私は、このままでいいのかな?
頭の中が、いろんなことでいっぱいになっていく。
不意に、本部長の声が聞こえてきた。
「リフォームは、一気にしようとするから、問題があったんでしょう。3年くらいかけて、少しずつしていけばいいじゃあないですか。とりあえず、必要なところだけして、利益が出たら、また、次に。」
所長が、
「とりあえず、危ないところだけは直したいですね。まず、...」と答えていく。
駅ビルを探して家賃を出す案と、縮小のリフォームの案を出して社長に相談することで、話が落ちついたところで、所長が切り出す。
「実際、本部長は、いくらのリフォームなら通ると思う?●●万?●●万?」
本部長は、しばらく考えて、答えていいものかどうかためらってから、
「わからない。社長がダメだという考えなら、いくらにしてもダメだと思う..」と、うつむき加減に話す。
それを聞いて、私は、
「危ないところなんかも直さなくていいじゃないですか!どうせ、引っ越すんだし、もったいないじゃないですか。」と、静かに反論する。
{なんだ。社長は、もう、決めてるんだ。じゃあ、何をしても無駄だ。}
私は、一瞬で悟る。
「いや、でも、危ないところは修繕しないと...」西山所長が、反論する。
「もったいないじゃないですか!」
私は、一喝する。
その後、本部長と所長は、2人で話を続け、しばらくして、話が終り、所長は自分の席にいったん戻って、途中になっていた仕事を片付けている。
本部長は、そのまま、座っている。
その間ずっと、私は、自分の席で、うなだれている。
{どうしよう。どうしよう。}
不安と悲しみでいっぱいになってくる。
{営業所は、残すって言ってたのに..
嘘つき..。移転の先は、目に見えている。本社なんか行けない。移転でさえ、お母さんが心配だ。}
いろんな想いが、込み上げる。
だけど、どうすることも出来ない。
本部長に、きちんと説明も出来ない。
絶望感で、深く落ち込む。
本部長が、立ち上がって私の方に近づいてくる。
「ねえ?明日、ここを立ち退けとか言ってるんじゃあないんだから。」
優しく、私を宥めるように話しかける。
{違う。違う。本部長は、何も分かってないから。}
私は、絶望感でいっぱいで、何も答えられない。
「ねえ?リフォームの提案をもう一度、出そうよ。ほら、まず壁紙を張り替えて、床も張り替えて、机も新しくしよう。」
本部長が、私に優しく訴えかけるので、私も席を立って、
「じゃあ、外の換気扇とフードと、倉庫の天井の内側の一部を..」と、身振り手振りを交えて何とか答える。
「それじゃあ、安すぎるよ。」
本部長は、困ったように言う。
「ほら、壁紙張り替えようよ。」
「要らない。」と、私は、そっぽを向いて答える。
{綺麗にしたいわけじゃない。私の望みは、違う。}
本部長は、困り果てて、しばらく黙り込む。
「西山所長、これから、不動産屋に行って、実際の家賃の相場を調べようか?」と、本部長が提案する。
「ああ、それやったら、●●会社の所長に、家賃聞くわ。ちょうど、言っている条件のテナントを借りて、してるから。」
●●会社は、うちの会社の競合でもあるが、私達の営業所通しは、仲がいい。
「そんなもん、教えてくれるかよ。」
と、本部長が呆れたように呟く。
「いえ、大丈夫ですよ。あそこの所長は、教えてくれます。」
私は、静かに答える。
運良く、向こうの所長は、すぐに携帯に出てくれた。
所長が、必要なことを聞いてくれる。
あちらも、すぐに答えてくれているようだ。
しばらく話しをして、電話を切り、
「家賃は、月●●万円らしいです。」と、所長が答える。
今の営業所の固定資産税の三倍の家賃になる。
「せっかくだから、これから見に行きましょうや。」と、所長が本部長を連れ出そうとして、先に車の方に行く。
{家賃がこんなにかかるから、移転は、無くなるかもしれない。}
私は、希望が少し出てきて、嬉しくなる。
「行ってらっしゃいませ。」と、私は、本部長が見に行ったあと、そのまま本社に戻ると思って、笑顔で見送ろうとすると、
「また、戻ってきますから。」と、
本部長は、優しく私を見つめながら言って、出ていく。
2人が出て行った後、一人残った私は、何だか疲れ果てて、自分の席に座って、ぼ~っとなる。
感情がコントロール出来ず、自分の感情の波に流されて、すっかり疲れきっている。
{私は、まだまだ未熟だ。}
私は、一人反省しながら、2人の帰りを静かに待つ。
それから、かなり時間が経ったのだろうか。
時間の感覚が分からなくなっていたところに、本部長が意気揚々と戻ってきた。
「見てきましたよ。向こうの営業所は、広さは、これくらいでね。倉庫が、一階になっていて..」
本部長は、嬉しそうに私に詳しく説明する。
嬉しそうな本部長を見て、私も笑顔で応える。
「これで、社長に説明しますよ。」
本部長は、引きあげようとする。
私は、少しためらう。
{もう、行っちゃうの?}
本部長が、すぐに察して、
「実は、●●物件の現場の立ち会いを抜けて来てて、6時までには戻るって言ってるんだ。」
そういえば、途中で、本部長が、自分にかかってきた携帯に、こっそりと気付かれないように、何かを話しているのを見た。
私が、営業所の時計を心配そうに見る。
もう、5時だ。
{どうしよう。間に合わないんじゃ?}
本部長は、また、すぐに察して、
「大丈夫。本社に戻るんじゃなくて、現場に戻るから。来るときに1時間もかからないことを確認してきてるから、間に合うよ。」と、優しく言ってくれる。
営業所に戻ってきた所長に、
「じゃあ、西山所長、頼んでおいたことをきちんと調べて、報告するように。」と、指図してから急いで出ていく。
本部長は、本社の重要な大型物件の立ち会いを抜けて、わざわざ来てくれていたのだ。
私は、申し訳なさにいっぱいになる。