↑カテゴリー別のタイトルで編集しています。【輝の4番目の会社のこと】【輝とミルのこと】をクリックすると、4番目の会社の話、ミルの話だけが見れます。🐈
↑鯉のぼりとミル(女の子だけどね。😸)
冬野本部長が、西山所長にリフォームを値切るように言われて、所長は、渋々リフォーム会社の担当の櫻井部長に電話して来てもらうことになった。
所長と櫻井部長は、うちの仕事の関係で現場が一緒になることがあり、顔見知りだ。
訪れた櫻井部長に、所長は、
「いやぁ、無理言ってすみません。」と頭を下げながら、応接室に入っていく。
しばらくして、中から揉めているような声がする。
そりゃそうだろう。
当初の1/3の予算に下がり、さらに事務什器は、ネットで買うから省く上に、さらに値引きしようとしてるんだから。
それでも、櫻井部長は、最終的に何とかすると言ってくれたようだった。
後で分かるのだが、かなり、必要なことを省かれて安くしたので、かなり、リフォームが大変なことになる。
あまり美味しくないリフォームの案件になったせいか、なかなか再見積りは来なかった。
かなり日にちが経ってから、再見積りが提出され、所長は、冬野本部長に提出したようだった。
それから、かなり日にちも経ち、私は、もう、諦めていた。
そんなことをしているうちに、新しい所長が来る日になってしまっていた。
新しい所長..
そう思っていたのだが、実際は、役職は、所長代理でやってきた。
{ふむ。なるほど、引き継ぎで慣れてから、期が新しくなってから所長にって感じなのかな。}
新しい所長に、私は期待でいっぱいだった。
新しい所長なら、いっぱいおっきい仕事をとってきてくれる。
新たに取引先を開拓してくれる。
新しいジャンルの商品を売ってくれる。
新しい改革だ!
私は、期待でいっぱいだった。
営業所に、所長代理が入ってきたとき、私は分からなかった。
{はて、誰だろう?どこかの仕入先さんかな?それとも、セールスの人かな?}
「福山でございます。今日は、挨拶にだけまいりました。」
と、丁寧に挨拶する。
「ああ!初めまして。所長!福山さんです。」
私は、慌てて挨拶して、所長に知らせる。
{え?私のイメージと違う。所長より年取って見える。ていうか、おじいさんみたいだ。イメージ的に、ちびまる子ちゃんの友蔵さんだ。}
私は、失礼ながら、少しがっかりする。
でも、すぐに気を取り直し、
{いや!実力はあるはずだ。紳士的な穏やかな営業で、バンバンいく人なんだ。}と思い直す。
「やあ、どうも。」
所長が、福山さんに挨拶する。
福山さんは、手土産を渡す。
福山さんは、私にも同じ手土産を渡してくれる。
私も、地元の銘菓を用意していたので、「あ、私も。地元で有名なお土産なんです。」と、手渡す。
福山さんは、喜んでくれる。
「本当は、リフォームも済んで、綺麗な営業所で迎えたかったのですが..」と、私は、しょんぼりする。
「いえいえ。」と、福山さんは丁寧に応えてくれる。
{本当に、どうなるんだろう?リフォームは無しで、このままなのかな?それとも、違う話しが出てるのかな?}
私は、途方に暮れる。
とりあえず、三人体勢が始まった。
私は、人が増えたのが新鮮で、なんだか楽しかった。
しばらく、三人体制を楽しんでいた。
いろいろ福山さんに教えて、いっぱい仕事取ってきてもらうんだ。
私は、期待でいっぱいで、張り切っていた。
そんななか、ついに本部長から電話が来た。
「冬野です。おつかれさまです。」
久しぶりの本部長の声だ。
相変わらず穏やかで落ち着く声だ。
「おつかれさまです。」
私は、嬉しい声で答える。
本部長が、最近、仕事が大変なのは知っていた。
だから、本当に、おつかれさまですという気持ちで、いっぱいだった。
「西山所長は、いますか?」
「あ!出掛けています。2人で出掛けてるんですよ。」
と、私は、2人で出掛けているということが、さも、真新しいことのように報告する。
「はは。」
本部長は、思わず笑われる。
「そうか。じゃあ、また、携帯に連絡するよ。」
本部長は、楽しそうに優しく言う。
本部長は、ご機嫌そうだ。
どうなったかは分からないけれど、本部長が楽しそうだから、どうでもいいや。
私は、ご機嫌な本部長の声が聞けて、ほっとして嬉しくなって、もう、それでどうでも良くなった。
夕方になって、2人は、ようやく戻ってきた。
しばらくしてから、ふと思い出して、
「あ、所長。本部長から電話いきました?」と、何気なく尋ねる。
「本部長?いや、電話来なかったけど。」
{あれ?}
「電話するわ。」と、所長が言うので、
「いや、急ぎの用じゃなかったのかも。」
もしかしたら、そんなことより忙しいのかもしれないと心配した私は、電話しようとする所長を止める。
けれで、所長は、言うことを聞かずに本部長の携帯にかけてしまう。
本部長は、すぐに出たようで、2人で話し始める。
本部長は、やはり、現場にいたようだ。
{だから、止めたのに.. . }
しばらく話してから所長が電話を切った。
「リフォームが決定した。なるべく早くやって欲しいそうだ。期が終わるまで、つまり、決算前までには終わらせてほしいとのことだ。」
{え?今は、もう1月の半ばなんですけど...3月の決算に入れたいってことですよね...}
リフォームは、嬉しい。
ただ、何故か、このリファームが大変な予感がしてならない。
その嫌な予感は、現実味を帯びてくる。
まず、所長が、なかなか、櫻井部長を呼ばない。
櫻井部長も、あまり大きくない案件で急いでいないのか、なかなか来ない。
やっと、櫻井部長が、インテリアの担当を連れて、打ち合わせに訪れたのは、2月に入って少しした頃だった。
計画表を持って現れた櫻井部長は、私達三人に説明し始める。
工期は、2月の後半から始めて、3月の前半までの三週間だった。
{結構、日にち、かかるんだな..}
壁紙、天井、床の張り替えもあるのに、その間ずっと、この場で営業することになる。
しかも、床の張り替えなんだから、当然、今、有るものを移動させなければならない。
なのに、西山所長は、移動費を省いてケチったので、その大変な作業を私達三人で自分でしなくてはならかった。
さらに、パソコン、電話などの線の処理も、こちらでやらなくてはいけなかった。
パソコンとメインサーバとのLAN関係等は、本社のICTに頼まないと...
福山さんが、総務とICTに応援を頼もうと、電話してくれる。
しかし、何か揉めているようだ。
電話を切って困った顔で私に、
「ICTは、行きたいけれど、上の許可が下りないかもしれないと。総務は、上が、拠点のことは拠点でやってもらわないと困ると言っていると。」と戸惑ったように言う。
一瞬で、私は、理解する。
{田城室長だ。田城室長の許可が下りないんだ。やりたいなら、頼らずに自分でしてみろ!逆らうおまえには、本社の助けは、よこさない。ということだ。}
私の中で、メラメラ、炎が燃えあがる。
「いいですよ。パソコンの接続は、私が出来ます。配線系統は、私が繋ぎましょう。ICTは、来なくても大丈夫です。」
私は、キッパリ言い放つ。
様子を見ていた櫻井部長が、
「物の移動は、真ん中に寄せていただいたら、後は、こちらでしますから大丈夫ですよ。」と助けの手を入れてくれる。
私は、静かに頷く。
「見てろよ、田城!やってやろうじゃないか!」
私の中の何かのスイッチが入る。