ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

日向とポライト🐎

↑カテゴリー別のタイトルで編集しています。【日向とミュウ】【日向の大学生活】をクリックすると、ミュウの話し、大学生活のときの話しだけが見れます。🐈


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↑小さいころのミル❤️
(ほんとに、おっきく育ったね🐈)


しばらく、ブログに戻れなくてすみませんでした。

営業所を守るための最後の一仕事として、ある資格を取っていました。

この資格は、少し不得手な部門で、かなり体力を消耗して、復帰に時間がかかりました。

でも、無事に資格を取り、体調も戻ってきましたので安心してください。😸

この資格取得の際の練習で、ポライト🐎のことが、鮮明に思い出されたので書いてみたいと思います。



~ポライトへ~

私が、ポライトに始めて会ったのは、大学2年生のときだった。

彼氏の琢磨が、大学を卒業して遠方に就職し、私達は、遠距離恋愛になった。

琢磨との時間が無くなって時間をもて余すようになっていた私は、同じ下宿先の階の違う杏梨ちゃんと過ごすことが増えた。

私が出掛けているときは、ミュウを外に出しているのだが、ミュウは、その間、この下宿先のアパートの住人たちの部屋を訪れて、可愛がってもらっていたようだ。

杏梨ちゃんも、その内の一人だった。
杏梨ちゃんは、同じ学部の同級生で、馬術部に入っていた。

当時、私は、違うサークルに入っていたが、あまり合わなくてやめていた。

時間をもて余していたこともあり、もともと獣医に憧れていて動物が好きだったことも重なって、私は、自然に馬術部に入ることになった。

馬術部と言っても、少数の貧乏サークルだ。
部員は、私を入れて7人だけしかいなく、馬は3頭だけだった。

貧乏サークルで3頭の馬を養うため、みんな交代でいろんなバイトをしていた。

このバイトも楽しく思い出深いが、この話しは、また違う機会にしよう。

部員も個性的な人ばかりだった。
この話しも、いずれ、またしよう。

3頭のうちの1頭が、ポライトだった。

ポライトは、黒毛のサラブレッドで、逞しく毛並みはツヤツヤしていて、綺麗な馬だった。

まだ若く、プライドが高かった。

polite(ポライト)という名前の通り、礼儀正しく紳士的な馬だった。

ポライトは、3等の中で秀でて頭が良かった。

馬は、相手を見るそうだ。
一瞬で、相手が上か下かを判断する。

{こいつは下だ。}と思われたら、なめられて言うことを聞かなくなるらしい。

ポライトも、例に違わずそうだっだが、少し異なっていた。

相手が下だと判断すると容赦なかったが、下のもの全てにそうかというと、そうじゃなかった。

ポライトは面倒見が良かった。
弱いものには、優しかった。

子供にも優しく、あやすように乗せてくれた。

ポライトは、私を弱くて守らなければならないものだと判断したようだった。

私がポライトに乗ると、よく、前を見ず、背中に乗っている私を見ながら走っていた。

{大丈夫か?}と私を見ながら、様子を見て走る。

私は、「大丈夫だから、前を見て走って、ポライト。」と、いつも笑いながら答えていた。

落ちそうになると、すぐに止まって、首を真っ直ぐに立ててくれて、私が落ちないようにしてくれた。

なかなか軽速歩から駈歩にしようとしない私に、

{ほら!練習しようよ!}と自ら、調子を合わせてくれて練習してくれていた。

ポライトは優しくて、頼りになる保護者のようだった。

私は、ポライトに鞍を乗せずにブラケットだけを乗せて、そこにまたがり、ポライトとお日さまぽかぽかの中を散歩するように歩くのが好きだった。

たまに、ポライトの背の上で、仰向けになって青空を見ながら歩くこともあった。

ポライトは、いつも、あやすように私を乗せて歩いてくれる。

その光景を見て、部のキャプテンは、
「おい、ひなた!よく、そんな恐ろしいことが出来るな!」と、呆れていた。

部のキャプテンや先輩達は、上級者で、障害物も跳べるし、よく、大会にも出ていた。

だから、ポライトにとって、先輩達は、私より、ずっと上のはずだ。

特にキャプテンは、一番上のはず。

だけど、キャプテンをはじめ、先輩達は、 ポライトに裸馬なんかで乗れなかった。

騎乗すると、かなり高くなる。
馬の身長は、高い。
落馬なんかしたら、大怪我しかねない。

鞍も手綱も無しに乗るなんて、命知らずもいいところなのである。

ポライトは、先輩達に厳しかった。

言うことを聞いていても、突然、聞かなくなる。

キャプテンのことは、さすがに、言うことを聞いていたが、希に、障害物を飛ぶのを反抗することがあった。

他の先輩達には、ひどかった。

騎乗して歩いている途中で、前足二本を持ち上げて立ち上がり、背中の先輩をふるい落とす。

乗っているのに、突然、ゴロンと横たわって、砂で体をこすりつける。

手綱を持って、降りてポライトを誘導しているときに、後ろから覆い被さりにくる。

馬小屋で、ポライトの手入れをしているときに、肩に噛みつく。

先輩達にとって、ポライトは、一筋縄ではいかない馬だった。

先輩の肩や腕、たまにお尻には、よく、ポライトの噛んだ痕が残っていた。

私は、ポライトに噛まれたことなんて、一度もなかった。

だから、キャプテンは、私のことを【馬使い】と呼んでいた。

多分、ポライトにとって私は、守ってあげなければいけないと思う程の弱いものだったのだろう。

私は、馬術部の中で下手くそのほうなので、大会に出たことがなかった。

私も、大会に出るより、馬達と戯れているほうが好きだったので、敢えて出たいとは思っていなかった。

ある地方の大会の遠征のとき、何故だか、キャプテンが、いつも大会に行かない私と美里ちゃんに声をかけた。

美里ちゃんは、学部は違うが同級生で、私とも仲がいい。


キャプテンが、
「おい、ひなたと美里。たまには、大会にお前たちが行け。杏梨と友美は、今回は留守番でいいだろう?」と、突然、言い出した。

友美ちゃんと杏梨ちゃんが、
「いいですよ。私達、留守番してます。」と笑顔で合意した。

いつもは、友美ちゃんと杏梨ちゃんが大会に行って、私と美里ちゃんは、残って大会に行かなかった馬と存分に戯れていた。

私と美里ちゃんは、不思議そうな顔
をしながら頷いた。

杏梨ちゃんと友美ちゃんは、障害物も跳べるので、障害の競技に、いつも出ていた。

私と美里ちゃんは、障害どころか駈歩も出来なかった。

だから、大会に付いて行くだけだと思っていた。

みんなと大会に行くのは、楽しかった。
みんなと和気あいあいと出来るし、ポライトとも一緒にいられる。
それに、先輩達の競技も見れる。

楽しいことばかりだった。

今回の大会は、近隣の県の大学の馬術部や開催県の幅広い馬術クラブの多くの人達が参加していた。

小さい子供からお年寄りまで参加していたフレンドリーな大会だった。

競技の種類も豊富だった。
先輩達は、各種の障害物レースにエントリーしていた。

私と美里ちゃんは、試合に出るポライトのお世話を楽しくしていた。

すると、キャプテンが、
「おい、ひなた!お前、エントリーしないか?」と、突然、言い出した。

「え?」
私が、きょとんとしていると、キャプテンが続ける。

ジムカーナに出ないか?エントリー枠が空いてるらしくって、主催者が、エントリーしてみないかって誘ってきてるんだよ。」

ジムカーナなら、おまえ、得意だろ。軽速歩を駈歩並みのスピードでこなすんだからな。ていうか、駈歩より速い軽速歩だもんな。しかも、手綱無しで両手放しで。」

キャプテンは、楽しそうに笑って話し続けている。

ジムカーナは、丸太やカラーコーン等でジグザグの道や、S字の複雑な道を作り、コースに旗等も設置して、右回り、左回りと決まった通りに回ったり、鐘を鳴らしたりするような競技だ。

結構、複雑で、馬との連携プレーになる。
馬が言うことを聞いてくれないと無理な球技だ。

でも、ジムカーナは、細かく複雑な小さいコースなので、駈歩ではなく、軽速歩で行われる。

駈歩だと、細かなコースをこなせないからだ。

「なっ!ひなた!ポライトとエントリーしろ!」
キャプテンが有無を言わさずに言うので、

私は、素直に、
「はい。」と返事した。

「美里も出ないか?」
キャプテンが、美里ちゃんにも優しく尋ねたが、美里ちゃんは、

「いえ、私は、いいです。」と、辞退した。

「えっ?美里ちゃんも出たらいいのに。」と、
私は、ビックリして一緒に出ようよと促したが、美里ちゃんは、出ようとしなかった。

私は、傍にいたポライトに
「ポライト、よろしくね。」と撫でながら、お願いする。

ポライトは、嬉しそうに首を縦に何回も振る。

私の出るジムカーナは、初心者レベルのジムカーナらしく、一番最後に行われる競技だった。

それまでは、先輩達の競技を、みんなと楽しく見ていた。

キャプテンは、さすがに上手かった。障害を綺麗なフォームで次々と華麗に跳んでいった。

他の先輩は、ポライトに跳ばしてもらっている感じで、キャプテンも、
「あ~!ポライトに任せろよ!」と、舌打ちしながら見ていた。

ある先輩は、障害の前でポライトが止まって、跳べなかった。
これを、馬の【反抗】と言う。

三反抗失格というルールがあって、三回、馬に反抗されると失格になる。

ムチや帽子を落としても、失格になる。

馬術は、紳士的なスポーツなのだ。

先輩は、二回の反抗で済んだ。

馬の反抗は、意外に多く、三反抗失格になる選手も、かなり多かった。


楽しく見ていたが、いよいよ私の競技の番になった。
急に私は、緊張してきた。

必死にコースを頭に叩きこむ。

緊張のピークで倒れそうになって、ポライトを待っていると、キャプテンが楽しそうにやってきた。

「おい、ひなた!おまえの競技、おまえを入れて2人だけだそうだ。失格にさえならなければ、入賞は確実だぞ!」

キャプテンが、楽しそうに笑顔で話す。

{え!入賞出来るの。}
私は、ビックリすると同時にさらに緊張する。

キャプテンは、たまに入賞することがあったが、他の先輩達は、誰も今まで入賞したことが無かった。

{よし、頑張ろう。コースを間違えたり、失格にならなければ、入賞出来る。タイムより、慎重に丁寧にいこう。}

私は、こころの中で作戦を練る。

ちょうどそのとき、先輩が、ポライトを連れてきてくれた。

緊張しまくっている私に同調して、ポライトも珍しく緊張する。

ジムカーナのもう一人のエントリーは、小学生の男の子だったが、かなり上手かった。

私の番になって、ポライトとともにコースに出て、帽子をとって一礼する。

さあ、スタートだ。

先ず、丸太の細い道を通り抜け、左側の鐘にタッチ、次にジグザグ歩行をして、右側の鐘にタッチ...

ポライトが、心配そうに後ろを振り向いて私の顔を見る。

{大丈夫?合ってる?}

「大丈夫よ、ポライト。合ってるわ。安心して前を見て。」
私は、微笑みながら答える。

ポライトは、絶対に失敗させたくないようで、珍しいほどスローペースで慎重にコースを進んでいく。

次の旗を左回り、次の旗を右回り。

珍しく、ポライトが反対の方に行こうとする。

「ダメよ、こっちよ。」
私は、優しく手綱で間違いを正す。

ポライトは、すぐに気付いて間違いを正してくれる。
ポライトは、珍しく緊張している。

あと、あの旗を左回りして、S字を通って、鐘を鳴らして、直線をダッシュして、ゴール!

最後に帽子を取って一礼して終了!

終わった途端、私とポライトは、ジムカーナのときのスピードの10倍くらいの速さで、みんなのもとに戻っていく。

{大丈夫だった?}
ポライトが、心配そうに私の方を振り向く。

「大丈夫よ。完璧よ。ありがとう、ポライト。」
私は、ポライトの首筋を優しく撫でながら感謝する。

ポライトは、やっと安心したようだった。
みんなのもとに戻ると、みんなが喜んでくれた。

緊張で疲れていたポライトを、先輩が気遣って休ませに連れて行ってくれた。

私も緊張から解放されて、ぐったりしていて、しばらく、放心状態だった。

大会も無事終了して、みんなが集まって表彰式が、始まった。

それぞれの競技の表彰が行われていく。
最後に私のジムカーナの表彰式だ。

「一位、◯◯ ◯◯君。◯分◯秒。」

小学生の男の子が、「はい!」と返事して前に出ていき、表彰状と賞品を受け取る。

「二位、青葉 日向さん。◯分◯◯秒。」

私のタイムは、男の子の2倍くらいかかっていた。
でも、そんなこと、全く、どうでも良かった。
とにかく、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

「はい!」
私は、満面の笑顔で大声で返事して、跳び跳ねるように前に出ていく。

優しそうなおじいさんが、私に、
「はい。おめでとう。」と、表彰状を渡してくれる。

私は、「ありがとうございます。」と満面の笑顔で、受け取る。

「それから、これが、あなたの賞品になります。」と、おじいさんが隠して持っていた賞品を私に見せながら手渡す。

「わあ!」私は、感動する。

ムチだ。赤と白の格子柄の可愛いムチだった。

私は、自分のムチを持っていなく、競技のときも先輩のを借りて出ていた。

といっても、私は、ムチを馬に使ったことがない。
ムチは、私にとって飾りに過ぎない。

主催者の人は、よく分かっていたのだろう。私にファッショナブルな可愛いムチを賞品としてくれたのだ。

「ありがとうございます。」
私は、溢れんばかりの笑顔でムチを受け取る。

振り返ると、全員が笑顔で割れんばかりの拍手で、祝福してくれている。


最高の大会だった。

このムチは、私とポライトの記念の宝物になった。

私は、このムチを使うこと無く、ずっと宝物のように大切に持っている。


今でも、鮮明にポライトのことを思い出せる。

黒く艶々した毛並みの誇り高きサラブレッド。

優しさと強さを併せ持ち、愛情に溢れた瞳を持つ美しい馬。

永遠に愛おしい私のポライト。

永遠に永遠に大好き。