ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

日向の大学生活-隆二さん-

↑カテゴリー別のタイトルで、編集しました。【日向とミュウ】をクリックすると、大学時代のミュウとの物語だけが、出ます。🐈







はしゃぐミュウと、花梨と茶トラを車に乗せて花梨の家に向かった。花梨の下宿は、市内にある。

私の大学は、四国にある。もともと、この大学に入りたいっていう訳ではなく、いわゆる滑り止めの一つだった。
格通知のペラペラの封筒が届いたとき、実家の居間で、私は、こたつでゴロゴロしながら、チラっとみて、近くのくずかごに捨てていた。近畿にあるおしゃれな私大が決まっていたし、ほんとの志望校は、獣医学部のある大学だったし、ペラペラの封筒は、不合格だと決めつけていた。獣医学部は、お金がかかるから国立じゃないとダメだと言われていたし、弟がいるから、浪人もダメだとも言われていた。
センター試験獣医学部は無理だと分かった私は、後期のほうで、この大学を受験していた。
「日向、結果は?」あ、お母さん、落ちてたよ。「通知は?」そこ。とくずかごを指差す。通知の手紙を拾って見ながら「日向!受かってるじゃないの!」え?正直、面倒くさいと思った。「お父さん、大変!日向が受かったわ!」父と母が喜ぶ。
私は、もう3月も後半なのにな。海を渡って引っ越しとかめんどくさいなって感じだった。

私の学部は農学部だ。農学部は、市内から離れた田舎にほうに別に校舎がある。本学は、市内にある。一般教育課程をとる1、2年生のときは主に本学に通い、3年からは農学部のほうで専門的に勉強する。この時に大半の学生は農学部の近くの下宿に引っ越す。花梨は、ずっと市内の一軒家の下宿にいた。

琢磨とは、3年生のときに農学部のほうで知り合った。一つ学年が上になる。剛さんも琢磨と同じだから、就職が決まっている2人は、もうすぐ卒業する。剛さんは大阪で、琢磨は広島だ。
ミュウは、琢磨と入れ替わりに私のところに来たことになる。今、思えば、ミュウは天からの贈り物だったんだと思う。

私はよく、琢磨の下宿で料理を作っていた。食べてくれる人がいるのは嬉しかったし、何より料理が楽しかった。料理は、化学実験に通じる所があると思う。微妙な火加減、調味料を入れるタイミングと量、全てのバランスが合わさった一点になる時に、絶妙に美味しいものが出来上がる。
そんな訳で、その日も分厚い料理本を見ながら、キャベツロールを作っていた。出来上がって、しばらくした時に、琢磨が剛さんと帰ってきた。
「やぁ、日向ちゃん。今日も美味しそうな匂いしてるね。」剛さんが笑う。「日向、このキャベツロールおっきすぎないか?」琢磨が笑う。まあ、ちょっと、キャベツをだんだん巻いていったらそんな大きさになったの。剛さんが「おっきいほうが、ええやないか。」と笑って、後ろから来た男の人を私に紹介する。「こいつは、俺らの同級生で隆二や、日向ちゃん。」「日向、気を付けろよ。そいつは、恋愛マスターや。いっぱい女の人と付き合ってきてるからな。」と琢磨が冗談めいて言う。「初めまして、日向ちゃん。そうですか。あなたが噂の日向ちゃんですか。隆二です。確かに、僕は、女ったらしでしてね。いっぱい女の人を泣かせてきました。」と笑う。剛さんが、「最近、そいつバイク事故にあってな。かなり危ないとこやったんやけど、生還したんや。日向ちゃん、そいつと座ってて。琢磨と食事の用意するわ。」と言って琢磨と台所のほうへ消える。隆二さんと向かい合わせに座っていたら、隆二さんが穏やかに言う。「日向ちゃん。女の人にいっぱい悪いことしてきて、バチが当たった今の僕がいうんだけどね。日向ちゃん、僕は、琢磨をおすすめ出来ないよ。」
穏やかな顔の隆二さんを見つめる。胸の奥に感じるのは、{隆二さんは、ほんとに私のことを思って言っている。感じるのは、暖かな感覚だけだ。}
隆二さんは、穏やかに微笑む。
「さあ、日向の作ったごちそうをみんなで食べようや!」琢磨が剛さんとお箸やら飲みものやらを持ってきて座る。みんなで楽しく食事を楽しむ。

隆二さんとは、そのとき以来会ったことがない。
だけど、隆二さんから受け取った暖かな感覚は、ずっと私の胸の奥に残る。隆二さんの顔も姿も、もう思い出せない。
ただ、暖かな感覚だけが胸の奥に残って私をずっと癒し続ける。