ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

輝と保険屋との闘い-ラウンド1-前編

郵便ポストの新聞を取り、事務所に入って、電気を付けパソコンを立ち上げる。台所のポットに水をいれ沸かす。事務所の横の扉の鍵を開け、更に横に通じる倉庫の扉の鍵を開ける。
二階の更衣室に上がって、荷物を置き、制服に着替える。下に戻って、玄関横の小さな花壇の花にジョウロで水を与える。

自分の席に座って、黙々と仕事を始める。

しばらくしてから、携帯のマナーモードが鳴る。相手の保険屋からのようだ。

はい、花田です。「花田さんですか?私、ABC損保の蒲田です。大塚 民子さんの担当になります。花田さんの保険会社は、どこになりますか?」
母は、スクーターに自賠責保険しか入っていなかったらしいです。
「なんや、任意保険入ってないんかいな。家族のほうで、ファミリーバイクに入ってないですか?」
それも入ってなかったです。
「なんや、面倒やな。保険の担当いてないんかいな。そしたら、大塚さんの車の修理の概算等出ましたら、また、連絡します。そのときに、そちらのスクーターの修理先を教えてください。そちらとやりとりしますから。」

何だろう。ガラが悪い上に性格も悪そうだ。この保険会社の質もかなり悪そうだ。最近、はやりのネット保険は、こんなに質が落ちるのだろうか。

母は、怪我をしているのですが、そちらの方は、どうなりますか?
「大塚さんから、事故の詳細は聞いてます。今回の場合は、そちらが加害者になりますので、こちらから一切怪我のほうの保険は出ません。物損のほうは、過失割合で相殺して請求させていただきます。」
でも、大塚さんは、母の怪我も心配していたし、それだったら人身に変えたほうが、いいんですか?
「大塚さんは、後は全て私のほうに任せるとのことなので、今後は私の意見が大塚さんの意見やと思ってください。大塚さんに直接、連絡もしないでください。人身にしても何も変わりませんから好きにしたら、よろしいですよ。」

身体中の血が、フツフツと沸き立ってくる。

ダメだよ。怒ったら、相手の思う壺だよ。

理性が私を抑える。

でも、母は、かなりの怪我ですし、健康保険も使えないので、10割で払っているのですが。
「そちらの怪我がひどかろうと保険は出ません。そんなに困るんやったら、第三者自賠責で自分で請求したら、よろしいやん。」

胸の奥のほうで、小さな炎がメラメラ燃え始める。


分かりました。
「分かってくれましたか。そうですか。それでは、また後日、連絡します。」保険屋は、上機嫌で電話を切る。

しばらく、今の会話の中身を沸き立つ血と燃え続ける炎とともに、吟味しながら静かに考え続ける。

バタン!自動車のドアが閉まる音がする。
所長が、お得意さんの山さんと帰ってきたようだ。

🐈続く🐈