ミュウと日向の物語

【ミュウと日向の大学時代の物語】と【輝の行政書士試験に受かるまでの奮闘記】です。他の物語も書いていきます。🐈

お彼岸-ライちゃんへ

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  • ライちゃんに捧げる-

ライちゃんは、茶トラの女の子だった。正式名は、ライサー。兄妹猫に、シルバーという白が多い茶トラの男の子がいた。

ライちゃんは、赤い鼻を気にしていて、子猫の頃は、眠っているときは、前足でお鼻を隠していた。
ライちゃんは、控えめな猫で、お気に入りの場所もすぐに他の猫に譲ってしまう猫だった。他の猫がいないときに、こっそりと私に甘えにきていた。
こっそり私の部屋に入ってきて、私の正面から膝にそっと乗り、前足を揃えて私の左胸にのせ、私の顔を見上げながら、しがみつくように甘えて膝に座ってゴロゴロ喉を鳴らしていた。
ライちゃんは、本当に気だてのいい猫だった。

ライちゃんは、18才のみどりの日(4月29日)に亡くなった。その日の早朝、私が傍で見守る中、そっと息をひきとった。
私は、二階から、以前デパートで買っていたフワフワの真新しい黄緑のバスタオルをライちゃんにかけてあげた。
ライちゃんは、「いいの?」と驚いたように一瞬、目を開けて、涙を流した。


少し気持ちを落ち着かせてから、私は、動物の供養をきちんとしてくれるお寺を探し、電話をして、ライちゃんを、ライちゃんがお気に入りだったかごのベッドにそっと置いて黄緑のバスタオルをかけて、連れていった。

お寺に着くと、夫婦のお坊さんが出迎えてくれた。どちらも修行を積んだお坊さんとのことだった。
だんなさんの方のお坊さんが葬儀をしてくれた。
葬儀の最中、お坊さんは、真新しいバスタオルがもったいないと思ったのか、ライちゃんから、そのバスタオルを取ってしまった。
その後、ライちゃんを棺の箱にいれて、棺掛けの金蘭の七条袈で覆い、その上に修覆羅(組み紐)を乗せた。

葬儀が始まった。お経を唱えながら、私に焼香を勧める。戒名は、ライサーだった。

しばらくしてすぐに、修多羅がパサッと下に落ちた。さらに重たい棺掛けが、急にバサッと下に落ちた。
棺の蓋がガタガタ鳴り出す。


そりゃ、あんなに喜んでいたタオルを取られたら、いくら気だてのいいライちゃんだって怒るだろう。


お坊さんが、お経を唱え続けながら、慌てて棺の箱を開けて、ライちゃんから取った真新しいバスタオルをライちゃんにかけ直して、全てを元に戻す。

お坊さんのお経は、永遠と続く。
心配した奥さんが部屋に覗きにくる。

ライちゃんの怒りは、なかなかおさまらないようだ。

急にお坊さんが私に向かって「兄妹猫の名前を!」と叫ぶ。
私は、「シルバー」 と呼ぶように大きな声で言う。

お坊さんが安心した顔で、シルバーと経木塔婆に書いて、ライちゃんのものと並べて置く。

お経がしばらくして、やっと終わった。

無事に成仏したようだ。シルバーが連れにきてくれたのだろう。



あれから月日が流れて、今は、キジ白のミルとキジトラのココの二匹の女の子が家にいる。

この子達は、まだ幼い。
ミルは猫用のオモチャで遊ぶのが大好
きなので、たくさんのオモチャが和室の座布団の上に置いてある。
ココは、甘えん坊で、ずっと撫でて!撫でて!とつきまとうストーカー猫だ。寒いときには、ココは、背中に乗ってきて、おんぶをねだる。
でも、どちらも抱っこは嫌いで、膝に乗らない。


今日は、日曜日。テレビを見ながら、応接間で、のんびりと朝食を食べている。
隣の和室で、ミルがミャアと鳴いて私を呼ぶ。
「どうしたの?」
ミルは、オモチャでいっぱいの座布団の上を目をまんまるくして見て、私に何か訴える。私と座布団を交互に見て、鳴いて何かを訴える。

ああ、今日は3月15日。もうすぐ、お彼岸だ。誰か帰ってきたのかな?
「ミル、大丈夫よ。こっちにおいで。」と宥める。

しばらくして、日課の掃除を始める。
いつものように、ココがまとわりついてきて、邪魔をする。こっち、こっち!ここへきて!ココを撫でて!と跳びはねながら私を和室に誘導する。

座布団の横に座って、いつものように、ココを撫でようとすると、ココが、そっと私の正面から膝に乗ってくる。
前足を揃えて、私の左胸の上に置いて、私の顔を見上げる。

ああ、ライちゃんだ。

ライちゃんが来るのは、これで三度めだ。いつも、お彼岸の前にくる。
多分、お彼岸に入ると忙しいのだろう。

「お帰り、ライちゃん、お許しをもらえたの?」と微笑む。
優しくライちゃんを撫でる。ゴロゴロ喉を鳴らして幸せそうな顔をする。

ミルは、和室の入り口に控えて、目をつむって大人しく座っている。
和室には入ってこない。

ライちゃんを撫でながら、座布団の上のおもちゃを見て、
「ライちゃん、今は、いろいろな猫のおもちゃが、いっぱい出ててね。ライちゃんのときは、おもちゃとか売ってなくて、ごめんね。」
ライちゃんは、胸の上の前足をぎゅっとにぎる。
分かっているよと言うように。
「ライちゃん、医学も今みたいに、もっと発達していたら、もうちょっとしんどい思いをしなくて済んだのに、ごめんね。」
ライちゃんは、また優しく前足をぎゅっとにぎる。

ライちゃんは、ずっと目をつむって幸せそうに甘えている。
私もずっと優しくライちゃんをなで続ける。


しばらく時間が経って、急にライちゃんが膝から飛び降りた。
後ろ足で、耳の後ろをガリガリ掻く。
ミルの方に跳びはねながら走って行って、追いかけっこを始める。

ああ、いつものココだ。

ライちゃんは、戻っていった。
ライちゃんが、居れる時間は、いつも少ない。



ライちゃん、あなたのことを想うとき、いつも光溢れる空間に光とともに蓮の花が舞い降りてくる光景が目に浮かぶ。
ライちゃん、あなたは、綺麗な心地よい場所にいるのだろう。



ライちゃん。
大丈夫、安心して。
ずっと、あなたのことを忘れない。
ずっと、あなたを愛している。