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てやんでぇ。なんだおめえは。
のミュウ
今日は、ちょっと気分を変えて不思議体験を少し
日向の学校は、大学三年から市内の本学から、郊外の農学部のほうに移って、専門的に勉強を始めるようになる。
このときに、自分で研究室を選ぶ。
各学年ごとに2~3人、だから研究室には、三年、四年の各2~3人と、あと、大学院生の人、博士の人や、他校の大学から編入してきた人、他国の研究機関から来た留学生、それに教授、助教授、研究生などがいて、なかなかにぎやかだ。
いろんな研究室があるが、日向の研究室は、植物遺伝学研究室だった。
いわゆるバイオテクノロジー、その頃流行っていた。
入ったころは、将来は、青色の薔薇の品種を作りたい!と意気込んでいたが、卒業時には、自然のままの花が、個性的で美しいと悟ることになる
この研究室には、ミュウと出逢うきっかけを作ってくれた花梨もいた。
院生に、間宮さんという身長2メートルくらいの男の人もいた。
間宮さんは、顔の左側半分に黒いアザがあった。
私は、美的感覚が人と違うので、アザが全然、気にならなかった。
むしろ、間宮さんは美形で優しい顔立ちなので、芸術的だとも思っていた。
多分、間宮さんにとっては、新鮮なことだったのだろう。
間宮さんは、私にとても親切で、いろいろと世話を焼いてくれた。
間宮さんは、私の中古の車、エコノミニカの整備をよくしてくれた。
オイル交換やバッテリー交換、洗車までしてくれた。
私が無頓着で、何もせず放りっぱなしなので、見るに見かねてしてくれたのだろうけれど。
研究室で、お菓子をボロボロこぼして食べてたら、拭いてくれたりもした。
体は大きいのに、繊細で乙女のような心を持っていた。
ある日、授業が終わって、食堂の横の生協で、お菓子でも買いにいこうと、ぶらついていた。
構内のネイチャー倶楽部の部室の前のほうから、私を呼ぶ声が聞こえる。
「ひ~な~た~!」
マリンだ。
マリンは、もちろん、アダ名だ。
マリンは、地元の実家から通っている同級生だ。入学のときから友達で、世話女房タイプで、よく私の面倒をみてくれる。
お化粧を初めて教えてくれたのもマリンだし、風邪をひいたら、下宿に食材を持ってきて、御飯を作ってくれた。
ただ、マリンは、料理の腕は、いまいちだ。
風邪なのに、鮭のムニエルを作ってくれたが、なんというか粉っぽかった。
マリンが、入っているネイチャー倶楽部は、よく野外で、いろんな活動をするサークルだ。今日も、これから、どこかに皆で行くのだろう。
車が3台並んでいた。
そのうちの一台の後部座席から、マリンが、私を呼んでいた。
車に近寄ると、
「ひなた!ちょうど一人分、座席が空いてるから、一緒に行こう!」と、マリンが、誘う。
私は、用事もないし、暇だったので、
「行く!行く!」と、車に乗り込み、マリンの横に座る。
運転手は、間宮さんだ。
しばらく車が、進んだところで
「それで、これから、何処へ行くの?」と、マリンに尋ねる。
「トンネルよ!心霊スポットなの!」
と、マリンが、ワクワクして答える。
「......」
{マジか。始めから知っていたら、乗らなかったのに。マリン、分かってて、何も言わなかったな。}
今更、降りることも出来ず、仕方なく
「心霊スポットって?」
と更に聞いてみる。
「バイクで事故死した男の人の霊を目撃する人が、いっぱいいるらしいの。」
と、明るく答える。
{何が楽しいんだか?見たくもない
わ。物好きなサークルだな。ああ、
大人しく帰っとけば良かった。}
結構、車を走らせて、7時前くらいに、噂のトンネルが、見えてきた。
夏なので、まだ、外は明るい。
トンネルに近づくと、マリンと助手席の男の人が、急に叫びだした。
「頭がいたい!頭がいたい!」
「うゎ~!」
間宮さんが、トンネル近くの原っぱに車を停めると、2人とも車から飛び出して行った。
後から来た2台も近くに停まると、みんな頭を抱えて、車から飛び出していく。
間宮さんと私は、訳が分からず、2人で顔を見合わせて、とりあえず降りる。
マリンを入れた10人が、大声で泣きわめいている。
どうも頭が痛いのと気分が悪いようなのだが、訳が分からない。
マリンを宥めようとするのだが、全然効果がないし、聞く耳をもたない。
間宮さんも、何とか宥めようとしているのだが、らちがあかない。
マリンに、「大丈夫よ。気のせいよ。何もないわ。落ち着いて。」と延々と宥め続けるのだが、何も変わらない。
周りの人を見ると、地獄絵図みたいに泣き叫んでいる。
30分くらい宥め続けて、疲れた私は、道路脇に座って空をみる。
夏の夜風が、心地よく、星も見え出して、なかなか綺麗だ。
夏の花は咲いているし、なかなか、いい夏の夜の風景だ。
まわりで騒ぐ人を見なければ....
間宮さんが、私の横にそっと座る。
「いつまで、ここにいなきゃいけないの?」と私が、ウンザリして聞く。
間宮さんは、面白そうに笑って、
「さあ?運転できやんやろうし、あんな状況じゃ、しばらく無理やろうな。」と優しく答える。
{何が起こっているんだろう?さっぱり分からない。心地よい夏の夜なのに。つまんない。みんなから仲間外れにされているみたいだ。}
更に一時間も経って、だんだん腹が立ってきた。
もう、飽きてきたし、ウンザリだ!
「もう!いい加減にして!面白半分で来るから、こんなことになるんでしょ!2度と、こんなことしないで!」
と、大きい声で怒る。
突然、みんなの泣き叫ぶ声が止んだ。
みんな急に我に返って、疲れて、ぐったりしている。
しばらく休んで、やっと帰れるようになった。
帰る道中、マリンはぐったりしている。みんな無言だ。
大学時代の夏の夜の思い出だ。
この経験から分かったのは、私には、全く霊感が無いということだ。
かなり、私は、鈍感なのだろう。