輝の迷走3~輝の4番目の会社
↑カテゴリー別のタイトルで編集しています。例えば【輝とミルのこと】をクリックすると、ミルの話しだけが見れます。🍀
↑一緒に眠ろう💞のミル
第一ステップのウエブ履歴が受かったことに、私は、舞い上がる。
ほら、だって、受かるはずないって思っていたから。
ウエブ履歴を作成した甲斐があった。
少なくとも、見られずに終わることはなく、ちゃんと見てくれたんだ。
私は、嬉しくてたまらない。
ウエブ履歴が、見てもらえるほどの出来栄えだったことに。
ああ!この感動を誰かと分かち合いたい。
でも、会社の人には言えないな。
何してるの!って怒られそうだ。
仕方ない。帰ったらお母さんに話そう..
とりあえず、第二ステップの準備にとりかかろう。
職務経歴書って、どんな感じかな?
フォーマットを探して..
{ !!!}
なんか、面倒くさそうだな。
雛型だけもらって、変えよう。
次に履歴書は...
いろんな種類があるんだな。
転職用..普通は、これなんだろうけど書きにくそうだな..
いいや、帰りに本屋で見てから決めよう。
えっと、今日は水曜日でしょう。
木曜日から、所長と福山さんは出張だから、明日中に構想を練って、金曜日に職務経歴書を完成させて、土曜日に手書きの履歴書を完成させ、日曜日に添付の写真を撮って、発送する。
うん、この計画で進めよう。
私は、ウキウキ気分で仕事を終わらせ、書店に急ぐ。
さて、履歴書のコーナーは?
あ!あった。あった。
4種類あるな。
書きやすそうな形式のは、これかな?
JISマークだしね。
4枚入ってるから、一つで大丈夫かな?
手書きだから、もう一つ買っとこうかな。
まっいっか。失敗してから。また、買いに来よう。
私は、レジのおばさまのところにルンルン気分で持っていく。
おばさまは、優しく微笑みながら会計してくれる。
多分、どこか楽しいバイトに行くのかな?と思ってるんだろうな。
家に帰って、お母さんに、
「お母さん、転職サイトのウエブ履歴が通ったの。すごくない?だから、ほら、履歴書買ったの!」と、自慢げに買ったばかりの履歴書を見せながら話す。
寝耳に水の母の顔が、険しくなる。
{あれ?雲行きが...}
「どういうこと?転職って。」
低い声でゆっくり尋ねられる。
すごいねっていう言葉を期待していた私は、いきなり、現実に引き戻される。
「あ、だから、その...」
私は、意気消沈して、しどろもどろに経緯を説明する。
一通り聞き終わった母は、
「もし受かったら、どうするつもりなの?」
と、こわい顔で聞いてくる。
「え?そりゃ受かったら、奇蹟だから、行くよ。ありえないことだもん。」
私は、笑顔で答える。
「給料とか待遇は、大丈夫なの?」
母は、心配そうだ。
「ウエブ履歴に今の年収とか書いといたよ。でも、まだ、第一段階だし。待遇とかは、書類審査の段階ではね~。まあ、履歴書に書いとくよ。」
まだ、心配そうな母を安心させるように、
「ほら、第4ステップまであるんだから、受かる確率は、極めて低いよ。せっかく通してくれたんだから、書類くらい、きちんと送らないとね。」と、明るく言う。
「まあ、そうね。受かったわけじゃないしね。」
母は、しぶしぶ納得する。
「転勤は?」
「あ!転勤は可能かどうか書いとくようにってメール来てた。」
「どうするの?ミルとココは?」
「う~ん。ミルもココも心配だけど、お母さんも心配だしね。3ヶ月、長くても6ヶ月で一人立ち出来るって書いてたから、それくらいは修行にいかなくちゃダメかもね。その後は、戻れるんじよないかな?」
「まあ、それくらいならね。」
母は、あまり納得していない。
「ちゃんと、履歴書に希望を細かく書いとくよ。お金も大事だし、ミルもココもお母さんも大事だからね。」
お母さんは、まだ、心配そうだけれど、早々に切り上げて履歴書やら職務経歴書のための資料を探し始める。
履歴書なんか、本当に久しぶりだからな。
今の会社に入るときの履歴書が、確かこのあたりに...
あった、あった。職務経歴書もある。
よし、これを参考に、明日、職務経歴書を作成しよう。
私は、一安心して眠りにつく。
翌朝、会社に行くと西山所長が来ていない。
「おはようございます。西山所長は?」
携帯でも忘れて、家に取りに戻っているのかなと思って尋ねると、
「おはようございます。それが、熱が出てて、病院に行くとのことです。」
福山さんが、丁寧に答える。
「熱?コロナじゃないでしょうね。」
「コロナではないらしいです。」
「そう。じゃあ、何なんだろう?」
私は、首を傾げる。
「あ、花田さん。私、今日は夕方から出張に出掛けますので、よろしくお願いいたします。」
「あ、分かりました。大丈夫です。」
{夕方からなのか..職務経歴書、今日は、あまり出来そうにないな。}
私は、少し、がっかりする。
{それにしても、所長、こんなときに..}
何となく、嫌な予感がしてくるが、気を取り戻して、仕事を始める。
{早く仕事を済まして、夕方から取りかからないと..}
私は、猛スピードで仕事を進めていく。
お昼前に、福山さんの携帯に所長から電話がかかってきた。
{なんで?営業所の電話じゃなく、福山さんの携帯にかけてくるんだろう?}
私は、訝しげに、話している福山さんのほうを見る。
電話を終えて、福山さんが、
「いつも行っている病院から甲状腺の値が高いので、大病院で診てもらうように言われたらしく、明日、紹介状を持って行くらしいので、明日もお休みするらしいです。」と教えてくれる。
「甲状腺の数値が高いってどういうこと?ガンとかじゃないよね?」
私は、さらに不信に思って聞く。
「さあ、違うんじゃないですか。」
と、福山さんは、冗談だと思ったらしく、笑いながら答える。
{だって、こっちに電話かけて来ずに、福山さんの携帯に電話してるし。なんか変だもの。なんか自信ないからに違いないもの。}
まあ、明日になれば分かるわ。
大したことなかったって電話かけてくるんだろう。
それにしても、どうして、こんなタイミングに。
嫌な予感が、だんだん広がっていく。
この転職は...
ううん。まだ、分からない。
とりあえず、履歴書と職務経歴書をきちんと完成して、提出しよう。
そう。
やることをやるのよ。
そうよ。
≪この転職は間違っているよ≫
こんな声は、気のせいよ。